ことばがとどく 〜竹内レッスンから〜

竹内敏晴さんは自閉症児の治療教育の第一人者
「ことばが劈(ひら)かれるとき」「からだとことばのレッスン」などたくさんの著書があります
ここから「ことばがとどく」というワークを取り上げます
■ことばがとどく レッスン
部屋の一方に送り手が立ちます
受け手は反対の壁に壁に向かって立ちます 目を閉じてもOK
両方が見渡せる側に観察者が立ちます
送り手は受け手の名前を呼ばずに 「ねえ」「あのさぁ」「おい」などの代名詞で 受け手の一人に向けて言葉を送ります
受け手は「自分に言葉が届いた」届いたと感じたら その場で振り向いて送り手に確認します
当たっていたら立場を交代して続けます
受けてを代えながら 送り手は言葉を送ります
観察者は送り手の言葉がどんな形 どんな速さ 勢い どんな色で どっちに向かって… などを言います
交代しながら一巡します 
全員が3つの立場 送り手 受け手 観察者をすべて体験します

言葉の交流が苦手なACには とてもいいレッスンです
言葉がとどく がどんなことなのか 体感できると 会話の大切さ コミュニケーションの大切さが理解できます
機会があればぜひ試してみてもらいたいレッスンです

「傾聴」で相手の感情を聴こう

感情を言葉にする
ACが学んでこなかったことでした
感情を言葉にしてはいけない と自分を規制してきたのです
実際にどうすればいいのか 分からないままです
この課題は逆に自分が相手の感情を聴く ということでトレーニングできると思います
相手と向き合います この場合の相手は健全な人にします
同類のACではトレーニングになりません
相手の話を 集中して聴きます
話してもらいにくいようなら 「最近ちょっと困ったこと」などお題を決めて
リラックスして そして集中して 相手の目を見て 表情やしぐさを見て 相手の話を聴きます
感情を言葉にする という実例を聴きましょう
その中に気分 感情の言葉を探します 喜怒哀楽の言葉です
相手の感情に気づいたら うなずいたり相づちを打ったりして 相手にサインを送ることも大切です
貴方の言葉は私に届きましたよ というサインです
なたがその言葉を復唱(繰り返し)してあげます
相手が「楽しかったよ」と言ったら「そう?… 楽しかったんだ?」と
相手の感情の言葉に反応して 繰り返すのです
「それはよかったね』の言葉も添えると 相手は「自分の気持ちを分かってもらえた」安心感を得るでしょう
これらの言葉は あなたが相手の感情を受け止めたというサインです
傾聴とは 相手の感情を聴くことです
ことがらや出来事を聴くのではありません
この過程であなたは驚くでしょう
今までの自分の話は 事柄の羅列だった!だから相手の共感もなかったんだ!
人って自分の感情を言葉にしていいんだ!
それを相手に受け止めてもらえた時って こんなに嬉しいんだ!
感情を理解しあえる 共有できるって こんなに素敵なことなんだ! と
今度はあなたが受け止めてもらう番です
これを繰り返してやっていきます
健全な人どうしの会話では この交流が普通に行われています
子供の頃 周りの子の会話に入れなかったのは
この感情の交流 共有ができなかったからだと気づくでしょう
原家族ではできなかった感情の交流
それが赤の他人との間でもできるようになれるのです
こんなことで 人は幸せを感じられるものです

生きていく という生命力

個の意識 自我の弱さが現れるのでしょうか
ACに希薄なのが 現実を見据えて自分がどう生きて行くか という生命力
何か儚さや弱さを感じさせます
それ自体は悪いことではないのですが 見ていて「この人大丈夫かしら」と思わせます
何かに 誰かに支えてもらっていないと倒れてしまいそうな そんな危うさです
これが魅力でもあり 放っておけない 何とかしてあげたい と周りを動かします
コミュニケーションの不全から 社会に出てもなかなかうまくいかず
仕事を転々としたり ニートや引きこもりになったり
失敗が続くと 意欲はだんだんなくなります
元々は機能不全家族の修羅場の中を生き抜いてきたサバイバーです
したたかな生命力は持ち合わせているのです ちょっとやそっとでは負けません
ただ残念なことは サバイバルは極度の緊張感の中で 本能的に行われたことなので
生きて行く上での基本的な安心感がないのです
安心して自分を丸ごと受け止め 受け入れ(いいところも悪いところも全て)
その上で「生きる」ができればいいのです
誰にも依存しない でも必要な時には助けを求める
他者との距離を適正に保つ でも甘えたい時 寂しい時にはもたれかかる
自分は一人である 孤独を受け入れる 誰もがそうであるのと同じように
そして自分のやりたいことに関しては諦めない
明るく前向きでいる ネガティブにならない 明るく笑顔でいる この自己コントロールは必須でしょう
そして 自分は自分の人生の時間を生きる ができればいいと思います
もうひとつ
何かトラブルに出会った時に 絶望しないように 孤立しないように
あらかじめ想定して 対処法を考えておくといいですね
万が一こんなことになったらこうしよう
方法は多いほどいいのです 一つだけではなく いくつも考えておきます
これも安心感を持って生きるための方法です

自分の道を自分で作ろう

人生設計 とか 目的意識を持って生きる とか
ACにはそれがどんなことなのか 分かりませんでした
家族のメンバーがそうだったからです
刹那的ともいえる人生の時間の過ごし方を見て それを学んできたのです
自分がどうなりたいのか たった一度の人生の時間の中で何がしたいのか
多分 家族のメンバーとそんな話などしたこともなかったでしょう
親の口から出るのは不満や愚痴ばかり 信用できるのはお金しかない
人生のささやかな幸せや 人との触れ合いを楽しむことなどなかったのです
自分はどう生きるか どうするか という「自」の感覚
限られた時間をどう過ごすか という「時間」の感覚
そんなものを学んできませんでした
親からもらえなかったものを手に入れるのは とても大変なことです
周りの他人から学ぶしか 方法はないようです
信頼できる相手を探すだけでもひと苦労ですし
そんな中から学びの師を見つけるのもなかなか大変
それでも周りの人を眺めて いいなと思う人をウオッチングです
眺めているといろんなことに気づきます
その人の話し方 表情 人との向き合い方
得るものはあります それを真似るのです
学ぶ とは 真似る から来ているといわれます
ここで親から学んだ悪しき嗜癖を捨てましょう
そして肝心の自分
自分には何ができるか 自分をどうしたいのか
まずは感じて そして考えてみましょう
なりたい自分 それを具体的にします
宮沢賢治の「雨ニモマケズ」にあるように具体的に
どうでしょう?
なりたい自分が 少しは見えてきましたか?