植物の受粉時期は、植物の繁殖期で、植物の一生において非常に重要な時期です。
多くの植物に共通して、受粉を行うには、自分の花粉を別の花に移動させなくてはなりません。
植物の受粉の仕方には、大きく二つに分けられます。それは、自家受粉と他家受粉です。
また、生殖器官の場所によって植物を分類する事が出来ます。それによると植物は、
両性花、雌雄異株、雌雄同種の三つに大きく分けられます。両性花は、最も多くの植物が
採用している仕組みで、一つの花に雄の生殖器官も雌の生殖器官を備えています。
両性花の植物は、理論的にはすべての花が単独で受粉が出来ます。受粉の分類では
自家受粉に当たります。特に有名な植物はイネ科の植物(コムギ、米など)です。 それ以外には
いくつかのラン、スミレです。
原理的には、すべての両性花は自家受粉ですが、実際には、物理的な障害物や化学物質を
用いて、上手く回避しています。なぜでしょうか?
自家受粉は、動物で言えば兄弟姉妹や非常に近い血縁での交配で、このタイプの交配は
遺伝子が新しい遺伝子との結合を行うことが出来ない事から、植物の進化にとって避けた方が
良い交配の仕方です。 そのために植物は、工夫をしています。一つの個体で雄の生殖器官と
雌の生殖器官の成熟する時期をずらすなど、自家受粉を避ける独特の仕組みを進化させています。
雌雄異株の植物では、性の異なる二種類の植物が、それぞれ単一の花(雄花か雌花)を咲かせます。
つまり、「雄」の個体(木や草)と「雌」の個体(木や草)が存在します。代表的な例はイチョウの木です。
その他には、ゲッケイジュ、セイヨウイチイ、アサ等です。
雌雄同種の植物は、カシやクリの様に、一つの個体に、雄の花と雌の花の二種類のはなを付けます。
このような三種の植物は、花が咲いている間にしなければならない事は、同じで、花粉が別の花の雌しべ
まで運んでくれる信頼できる配達人が必要です。
三種類の植物とも、それぞれの方法で配達を依頼しています。それらは自然現象を上手く利用した配達人
(風)に任せたり(風媒花)、動物にお願いする植物(虫媒花、鳥媒花等)もいます。
風媒花(風に花粉を運んでもらう)の植物は、動物に関わる必要がなく、まったく面倒もない利点がありますが、
どこに花粉が飛んでいくか分かりません。そのために、配達を成功させる確率は非常に少ないことから、植物は
沢山の花を咲かせ、大量の花粉を飛ばさなければなりません。これが、春の花粉症の原因になっています。
この風媒花は、主に裸子植物(種子が子房で保護されていない植物)のような古い植物に見られますが、進化上
、進んだ植物種だある被子植物にも見られます。具体例として、オリーブがそうです。被子植物の大部分は、花粉の
配達を風よりもずっと確実な動物の配達人に任せています。
花粉の配達人として、最も広く利用されている動物は昆虫です。虫が受粉の手伝いをすることを「虫媒」と言います。
植物が花粉のはいたつを頼むのは虫だけではなく、ハチドリやオオム等が利用される「鳥媒」があります。アメリカの
砂漠地帯に生えている多くのサボテンはコウモリを花粉の配達に利用しています。
植物の世界も動物の世界と同じで、誰もが無償で花粉を運んではくれません。昆虫は労働力を提供し、植物は
独特な報酬を支払います。動物が大好きで栄養たっぷりの物質、蜜や糖類を報酬として、与えています。
植物は、この目的のためだけに蜜等を作っています。
一般的には、次のように考えられます。どんな動物でも、蜜を食べたり、集めたりするために花にやってきて、
蜜を取る時に花粉を体に付け、それを別の個体の花に運んでもらっています。もちろん、花粉の配達先は
どんな花でもいいわけではありません。同じ花でなくてはなりません。別の花に運ばれた花粉は無駄になります。
植物は、同じ種類の別の個体の花に花粉を配達してくれるように、どのようにして動物に頼んでいるのでしょうか?
なぜ、昆虫や動物は、植物に忠誠をつくして、きちんと配達をするのでしょうか? 現在、全くの謎です。
現実的には、昆虫達は、朝一番に訪れた花と同じ種類の花から、一日中蜜を集めます。
この様に、あらゆる受粉や植物の繁殖の基本となるこの奇妙な行動を昆虫学者達は「訪花の一定性」と呼んでいます。