トウモロコシの場合、どのように対処しているのでしょうか。
アメリカのトウモロコシは、何年もの間、ハムシの一種(ウエスタン・コーン・ルートワーム)
に悩まされ、大きな被害を受けてきました。この昆虫の幼虫はトウモロコシの根に付き、
まだ、抵抗力の無い若い苗を枯らしてしまいます。ヨーロッパの最も古いトウモロコシの
品種や野生のトウモロコシは、ハムシの攻撃から完全に身を守ることが出来ていました。
これらのトウモロコシは、現在、栽培されているものとは大きく異なっています。
私達が収穫量の向上をめざして、大きな実を大量につけるトウモロコシを作り出そうと
改良をつづけたあげく、自分の身を守れない品種を選んでしまったのです。トウモロコシ
が防御能力を失ったのは、人間のせいでした。
古いトウモロコシの品種は、ハムシの幼虫に根を攻撃されると、助けを呼ぶために
自ら「カリオフィレン」という物質を作ることが出来たのです。この物質は、線虫の一種である
小さな虫を引き寄せる独特の効果を持っています。この線虫は、ハムシの幼虫が大好物です。
このようにして、線虫はハムシの幼虫をすべてむさぼり食い、トウモロコシを寄生虫から守って
くれていたのです。 この害虫を駆除するために多額の資金が投入され、大量の殺虫剤
が散布されました。 さらに、トウモロコシが本来持っていた防衛機能を蘇らせるために
遺伝子工学の力を借りなければなりませんでした。そして、「カリオフィレン」を生産する
遺伝子が、再び、トウモロコシに組み込まれ、新しい品種が作り出されたのです。