1.植物は人間の五感以上の感覚を持つ生き物です

 植物は、人間と非常に良く似た五感、視覚、臭覚、味覚、聴覚、触覚以外に、人間が持っていない少なくとも十五の感覚を持っていたことをご存知でしたか。
 進化の巧みな戦略として、自分で動かない生き方を選択した植物は、身体を動かせないからこそ、まわりを良く見て、臭いを嗅ぎ、音を聞き、持っている感覚をすべてしっかり働かせて、周囲の様子を探りながら生活し、身を守り、成長し、繁殖するために絶対に欠かせない手段を身に付けています。植物の感覚能力は、動かないで生きていく環境に合わせて発達してきた独自の能力です。
 視覚は、植物には目はありませんから、人間の様に見る事が出来ませんが、「視覚」を光の感覚や光の刺激を知覚する能力と定義すれば、植物は間違いなく視覚を持っています。
植物は光を取り込み、利用し、光の量と質を識別できます。光は植物が光合成によってエネルギーを作る基本的な要素で、視覚能力を強化してきました。植物は光を受けるために葉を動かし、身体の位置を修正しながら光の射す方向に向かって成長していきます(屈光性)。
植物の内部にある化学物質が光を感知するセンサー(光受容体)として機能して、赤色、遠赤色、青色、紫外線の特有な波長を吸収して、発芽、成長、開花等の植物の生育過程に、これらの色の光が支えになっています。
光の受容体の大部分は、光合成のための特別な器官である葉の中にありますが、それだけではなく芽の若い部分や先端、巻ひげ、木にもたくさんの光受容体を持っています。
驚くことに、根の部分にも光を感じるセンサーがありますが、葉と違って根は光が嫌いですので、遠ざかろうとします(負の屈光性)。

落葉樹は、秋になると多くの木から葉が落ちます。植物が持つ光受容体の大部分は葉にありますので、葉を失った木は、動物が目を閉じる時と同じく、眠りにつきます。
植物では「休眠」と言われる現象で、冬の間、成長周期を遅くして、「目を閉じ」眠り続け、春になるとまた、正常に機能し始め、芽をだし、再び葉をつけ、目を開きます。