【プロ野球】日本シリーズ・第7戦 西村ロッテ、新伝説
2010年11月8日(月)08:00
(産経新聞)
■「和」の力、歓喜の舞い
クライマックスシリーズ(CS)に始まった短期決戦を三たび勝ち抜き、「下克上」を完成させた。ロッテの西村監督がゆっくりと歓喜の輪に交じり、3度、宙に舞った。「最高です」。史上初の3位からの日本一。監督就任1年目で頂点へと駆け上がった。ロッテ一筋29年。「誰にも負けない」と自負するチーム愛が、シリーズ制覇に結実した。
バレンタイン前監督のもとでばらばらだったチームを一つにすることが初仕事だった。「個々の能力はすごいのに。2年連続Bクラスのチームを、自分の手で強くしたい思いがあった」。ヘッドコーチの立場で感じた歯がゆい思いを、スローガンの「和」に込めた。
原点は宮崎県立福島高時代にある。「すごく田舎の高校でね。個々の力はない。でもチームワークは負けなかった」。赤点を取ると校則で試合出場が許可されない進学校。学業と両立させ、2年時に甲子園の土を踏んだ。「チームワークで甲子園に行けたという思いがずっとあった」
現役時代は「厳しい人」で知られた。礼儀を知らない選手は怒鳴りつけた。だが、監督就任後は「1軍は大人の集団」と選手を尊重し、対話を重ねた。サブローは「普通は選手が監督に意見すると『文句言うならやめろ』といわれる。でも監督は話を聞いてくれてやりやすかった」と話す。
スローガンの「和」の通り、自慢のマリンガン打線は今シリーズでもつながった。この日は2死から6点をもぎ取り、最大4点あった差をひっくり返した。強打の根底には「詰まったヒットでも良い」という金森打撃コーチの教えがある。手元でとらえた方が強い打球が打てるからだ。「気持ちにゆとりができる」と今江。引きつけて振り抜く迷いないスイングで、阪神、巨人を封じてきた中日投手陣を粉砕した。
「いろんなアドバイスをもらった。何かある度に相談できる人」と尊敬するロッテ時代の先輩、落合監督との対決を制した。「全員が一つになっていた。選手だけではなく、スタッフ、コーチ、そしてファンと一つになって戦うことができた」。ぎすぎすしていた1年前とは劇的に変わったチームの雰囲気。信念の「和」で頂点をつかみとった指揮官の胸を、万感の思いが駆け抜けた。(神田さやか)