三井さんの言葉~その3

すっかり間があいてしまいました。;
遅ればせながら、今少しづつ、ハガキを準備しています。
「リンゴの木を描こうと思って、、」の続きです。
絵本を応募する人のため、何回か応募したときのことを順を追って、、


「ーとにかく誰かにみてもらいたくて、のらのらしていた自分が描こうと思って、描けば何かあるんじゃないかと。ー
いちばんすみっこに入ってしまって、すごくショックだったのね。
落ちなきゃいけない、と思っていて。
こういういいかげんな気持ちで描いたのが、いくらすみっこでも載ったというのが許せなくて。
変なショックでした。」
授賞式の時に、最優秀賞の宮本さんにお会いして、応募する時に描いたその時に体調をこわして、
半年後の授賞式でも、首や腕が痛いと言っている人です。
身体を壊すほど絵を描くってことに、なんてことかと驚いて、私はのらのらして描いているのに、
宮本さんは仕事やりながら描いていたのに、身体こわすほど描くなんて、、
私もやろう!って思ったことをおぼえています。」
「どうしようもなく落ち込んでいた頃があって、自己逃避だったというか、どこかへ旅立ちたいって気持ちだけで
別に描こうとか思ってないのに、{リンゴの木が描きたいから、リンゴ園に行きます}
なんて大っきなうそをついてしまったんですね。
そうしたら、そのウソを見破られたのかどうかわからないけど、その話し合いの後
呼び止められた人に、{リンゴの木は見なくても描けるんだよ}って言われたんです。
これもショックで、人間には想像力があるから、当たり前なのね、、、
で、言葉もわからない弘前に行って、だんだん言葉がわかるようになって、
自分を取り戻してきて、その土地の人情がそれ以上続くと、あんまり入り過ぎたのね。
私、軽い気持ちで描けなくなってしまったのね。
で、軽い気持ちで描けなくても、とにかく描かなきゃいけない、、と思って、、、
今も追い詰められるような気持ちで、いつか描きたいと思っています。」

「やっぱり、人っていうのは健康でないとだめなんですね。
当たり前のことながら、そう思います。
体調もよくて、心の状態もよくて、そのうえちょっと余裕もって、あんまり余裕があると遊ぶから、
とにかく描きたいと思います。」
「-描きたいことと、自分がどういう距離にいたら描きやすいかということが、
今私わかんないんですね。
なんか、すぐのめりこんでしまって、人が泣いていたら、同じに泣くしかないしね。
で、そういう作品と自分との間隔がとれないもので、まだおどおどしてる、、、、。」
「ひとつのことに執着してしまうと伸びきれないところがあるからね。
自分の絵にうぬぼれるのもいいけれど、他の立場から見るっていうことをすると、
また自分に近づけるんじゃないかなあって思うんです。」
「いつか誰かに言われたけど、描きたいものがあるのに、描かないのは、描きたいものにたいして
失礼だって言われました。私もそう思います。」

以上が絵本のセミナーで、三井さんが話した言葉です。
ほんとに繊細さと、優しさと自分独自の見方を持ち合わせていた人だった、と、今さらながら心打たれます。
もし生きていたら、どんなふうだったんだろう、、、と、ついつい思ってしまいます。
世俗にまみれ、年をとった身としては、たまには、彼女の言葉を思い出してみたいな、、、とつくづく思うしだいです。

三井さんの言葉~その2

「リンゴの木を描こうと思ってリンゴ園に行ったら、りんごの木が描けなくなったお話」
「月刊絵本とは年々もつきあいがあって、
こうして皆さんともお目にかかれたんですけれどね。
まだ見ぬ方とお友達になることもあって、手紙をくれることがあるんですね。
その中に絵本はどうして描けばいいんですかと、聞いてれる方がいるんですけど、
私は意地悪でもなんでもなくてね。
いっっしょに描きましょうとか、そういうことしか言えないのね。
そんなことより、手紙の文字の中に、私と同じことを考えている人がいるんだなあとか、
あっ、この人さみしいのかなとか、何が言いたいのかなとか、
そういうことばかり考えてしまって、返事を書くときに、その時に周りにいる、ハエが飛んできたらハエのこととか
レコードが聞こえたら、そのこととか、横道にそれながら、返事にならない返事を書いてしまうんですが、、、。
とにかく私も描きますから、あなたも描いてくださいって、とにかく絵本を作りましょうって
一行書くことしかできないんです。」

「絵本を作るときに、絵が先かどうかは、人によるとおもうけれど、
まあ話があったとしてそれにラフをつけて、本格的に組み立てるっていうのは、
私はわかっているつもりなんだけれど、私がそうしてないから人には、いえないんですけれど。
すべてはぶっつけ本番で、描いてはやぶいて、描いてはやぶいて、
結局気が付いたら自分はゴミの山にかこまれていて、破られずにいたものを集めて、これが、
月刊絵本のところに応募されたりして、いつも中途半端なんですけど。」
「今手探りの状態で、これからも当分こういう状況が続くと思います。
小さい子供が何かを表現したくて、おどおどしている状況ってあるでしょ。
あれと同じで、言葉を知らないんですよね。」

三井さんとは、私も表現者のはしくれなので、表現のことを色々話しましたが、
みなそれぞれ、表現したいものがあるなら、とにかく描く、それにつきる、
手法なんて、人それぞれでいいんだから、みたいなことを話ました。
何も描かないで、口だけでものを言う人が多いことも。
とにかく描く。そこから始まる、、、ということでしょう。
みなさん失敗を恐れたり、はじめから完全なものを求めすぎる人が多いのかもしれません。
もし表現したいものがある人は、とにかく手を動かす、、、と言いたかったと思います。
表現したいものが特にない人や、他で何かを表現できている人は、
あえて、しんどい、ものをく、、、なんてことをしなくてもいいわけですものね。

三井さんの言葉~その1

この前のトークショーに出ていただいた、又重さんが
その時に言いそびれた、、と偲ぶ会の時に教えてくれたのが、三井さんの言葉でした。
彼女の人柄と、表現することの心持ちを伝えるのにいい、、と思われたようです。
それはとても三井さんらしく、すごくいい話でした。

月刊絵本78年10月号にのっています。
絵本の学校の講義録。
色んな絵本作家さんが、絵本の作りかた、等の絵本の講義の話をしている中で、
三井さんは「リンゴの木を描こうと思ってリンゴ園に行ったらリンゴの木が描けなくなったお話」として話しています。
長くなるので、いくつかに分けて書きます。(これは、九州でおこなわれたようです。)
「みんなが集まっているので、てっきり海を見ているのかと思ったら、本を見ていて、
都会と同じことをわざわざここでしなくてもいいと思っているのですけど。
私、1時間もつかどうかわからないから、早くご飯食べて、それでこの海の水の温度を足で感じて、遊んでもらいたいと思います。」
「子供は恐ろしいくらいの目をもっていて、4歳の甥と、ビーグル犬と3バカトリオで、毎日探検ごっこして暮らしてるんですけれどね。
子どもが言うには、犬が暑そうだから、毛を剃刀で取っちゃうと騒ぐんですね。
私、犬小屋に寝てみたの、そしたら案外涼しいのね。ただのらのらと暑そうな顔して暮らしているだけで、
うちの犬はずっと怠け者だと思って、頭なぐってやったんだけど、、」

「昔雪国に憧れててね。雪って美しいなと、雪国の人に言ったら、何気なく言った言葉だけど、相手の人を傷つけたらしくて
雪を知らなきゃいけないと思って、北海道の稚内の下の方の、水もない、ストーブもない、電気もないっていうところで、
数か月暮らしたことがあって、それでも井戸をガチャガチャやって、少しの水を得て、ただただ喜んでも水の重々しさと、
人の言いたいことが近づいてこなくて、その美しさだけを感じていたことがある。
先日、東北の祭りを見て、その勇ましさの中にある重み、夏の激しさを知って、やっと雪の重さがわかった気がするのね。
で、今まで雪を知ろうと思って、冬をさけてたけど、夏に雪を知るとは、、なんたるか、、、です。」