第88回 FMF胎児クリニック 院長 林伸彦 様

第88回 FMF胎児クリニック 院長 林伸彦 様

 

所在地  千葉市美浜区ひび野2丁目3 アパホテル&リゾート東京ベイ幕張セントラルタワー47F
電話  050-3200-0647
 HP  https://taiji.clinic/
診療科目  胎児診療

img_q1胎児クリニック という言葉をあまりに耳にしたことがありませんが、どの様なクリニックでしょうか。


IMG_4131 簡単にいうと、胎児を診るクリニックですね。
僕らが診る患者さんはだいたいこの位の大きさの赤ちゃんです。(右写真:先生の手のひらに乗っている赤ちゃんの人形です)
だいたい4cmから5cmくらいの赤ちゃんで、この赤ちゃんに心臓の病気がないかとか、指の本数が5本あるか、指がくっついていなか、唇が割れていないか、無脳症などの病気がないかを診るクリニックです。
4cmから5cmくらいの赤ちゃんというのは、妊娠が分かって2ヶ月くらいですね。
この時期でないと分からない病気や症候群も多くあります。例えばダウン症は、妊娠14週以降のエコー検査ではほとんど気付けないので、心配な方は妊娠12-13週の時期に来て頂いています。

(マクスタッフ質問:お腹の赤ちゃんがダウン症かどうか知る方法として羊水検査が思い浮かぶのですが、羊水検査とは違うのですか?)
 羊水検査は100%分かる確実な検査ですが、お腹に針を刺す必要があり、流産のリスクを伴います。僕らが提供する「コンバインドテスト」は、エコーと母体血液を使うので流産リスクはありません。約97%見つけられる検査なので100%ではないのですが、羊水検査をする必要があるかどうかの判断に使えます。羊水検査をしなくてはいけない人というのはほんの一握りですね。

img_q2胎児クリニックには、何か心配なことがある方だけが来院されるのでしょうか。


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 実態としては、心配と感じた人が調べて来院することが多いです。ただ、それはまだ啓発が進んでいないのだと思います。
例えば、この位の大きさの赤ちゃん(4cm~5cm)に病気が見つかる確率ってどの位だと思いますか?

(マクスタッフ:1%あるかどうかという位でしょうか…?)

実は10人に1人位なんです。そのほとんどは普通の妊婦健診では見つからなくて、こういうクリニックに来て初めて分かります。日本では聞き馴染みのない胎児診療ですが、こういうクリニックは海外には普通に沢山あるんですね。なので、ここに来る方は一人目は海外で出産したとか、外国人の方が多いです。その方達はそもそもこういったクリニックの存在を知っているので、日本で妊婦健診を受けた後に海外との違いを感じてこちらに来ますね。

質問に戻ると、妊婦健診で異常を指摘された方や、知識があって自ら来るというのが実態ですが、それ自体が本来あるべき姿ではなく、本当は全ての赤ちゃんが検査を受けられる様になった方が良いと思っています。他の先進国は実際にそうなっています。

(マクスタッフ質問:お腹にいる時に見つかった病気とかは、出産するまでの間に実際に治療とか出来るのでしょうか?)
そうですね、海外には胎児診療科があり、赤ちゃんの健康診断だけでなく、治療も保険適用です。日本だと赤ちゃんは保険証を持つことができず、病気があるかどうかの検査も自費、治療も自費です。自分がいたイギリスは、胎児健診は無料ですし、胎児治療をする場合でも、全額国が払ってくれます。日本ではそういった仕組みがないので、費用が高いんですよね。他の国ならタダとかせいぜい1万円ー15万円程度ですが、日本では数万円~百万円程度かかることもあります。不妊治療のように保険適応されたらいいなと思いますが、保険に出来なくてももう少し安くなるといいですよね。今は胎児診療のための医療機器や人材が不足していて難しいのですが、充実してくれば価格は下がると思います。

 

 

img_q3林院長が胎児医療に携わろうと思ったきっかけを教えてください。


IMG_4167 医療の進歩でこれだけ赤ちゃんが診れるようになると、妊娠中の10カ月で病気になる子や、病気が進む子を見ることがあります。腫瘍があればどんどん大きくなってしまいます。また、麻痺などで足が動かない場合もどんどん動かなくなってしまいます。胎児貧血も輸血をしなければ死産してしまいます。日本では病気が見つかっても、生まれるまでただ様子を見ているだけなのはどうしてだろう?という想いから胎児治療という分野に入ってみようと思いました。
そもそも日本では、赤ちゃんの病気を見つけることがタブーなので、胎児治療の機会を持てる赤ちゃんばかりではありません。胎児クリニックに来られる方の中には、検査を受けることをかかりつけの先生には相談出来なかったり、相談したら「病気を見つけてどうするの」と怒られたという方も沢山いらっしゃいます。全ての産婦人科医が、どういう病気だったら胎児治療が出来るのかとか、その胎児治療をする為には妊娠何週までに見つけなければいけないとかを理解しているわけではないため、妊婦さん個々人の知識と意識が必要です。

(マクスタッフ質問:胎児科と産婦人科というのは全く別なのでしょうか?)
その通りです。全く別です。新生児科(NICU)って聞いたことありますか?未熟児で生まれた赤ちゃんや生まれつき病気のある赤ちゃんを専門で診る診療科があるのですが、新生児科がない時代は産婦人科医が未熟児も診ていたんですよね。でも新生児科ができて、診療レベルは全く変わりました。それと同じように胎児科がある海外では、胎児を見る技術が発展しています。妊婦さんは産婦人科に受診しながら、胎児科にも3回ほど受診します。

(マクスタッフ質問:胎児クリニックを受診されるのはどんな方でしょうか?)
こちらに来る方の中には、それまでの妊娠で辛い経験をした方が多いです。赤ちゃんの病気がこんなにたくさんあるというのは、普通に過ごしていたら知らないことで、妊娠したからといって知ることでもない。例え診断されても周りに言うことは少ないですし、大半の方は何事もなく出産されるので、実際に辛い想いを経験された方が多く来られるのでしょうね。

(マクスタッフ質問:胎児クリニックは日本にどれくらいあるのでしょうか?)
胎児クリニック専門は片手で数えられるくらいだと思います。また、FMFの診療内容は世界的にも評価されており、海外から受診される方もいます。この場所でクリニックを開いた理由も空港から直行のバスがあることと、宿泊施設があるということからです。

 

 

 

img_q4林院長が患者様と接する時に心がけていることを教えてください。


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 価値観を理解することです。僕らの分野だと答えがないことが多いです。例えば赤ちゃんの心配をどこまでするかとか、どこまでの検査をしたら安心するか、というのは人によって異なります。赤ちゃんの将来について全てがわかるものではないですし、検査にはきりがありません。ダウン症を調べるかどうかというのは社会でも問題になっていますけど、ダウン症の他にも心臓病や手足の病気など、無数に心配事はあります。そんな細かいこと調べてどうするのと言って突き放してしまう医療者も多いですが、知りたい背景には理由があると思っています。…例えば家族がこういった病気を持っているとか、前の子をこういった理由で亡くしているとか、小学校の同級生に手の形が特徴的な人がいていじめられていたから心配とか、ですね。背景をしっかり聞けば、不安の本質を理解して話が出来ますよね。親族のその病気は遺伝するものではないので、それによってリスクが上がることでないよと説明すると、検査を辞めるとおっしゃる方もいます。そもそも正確な知識がない中で漠然と不安になる方が多いので、相手の不安を読み解いて、相手の価値観を尊重し、必要な正しい医療知識を伝えて一緒に考えるということを大切にしています。

 

 

img_q5クリニック名・ロゴに込めた思いを教えてください。



IMG_4095 ロゴは僕らが作ったものではなくて、FMFのものを使用しています。FMFはイギリス発祥のチャリティー組織で、妊婦さんと赤ちゃんの健康向上を目指しています。世界中にある組織ですが、僕が日本のFMFの代表をしており、当院は日本で唯一FMFのゴロを掲げているクリニックです。
ロゴは妊婦のおなかの膨らみをイメージしたものです。

 

 

img_q6クリニックの内装でこだわったところを教えてください。


 コンセプトとしては病院っぽくない空間を作りたかったです。どちらかというと美術館の様な…
あとは極力「角」を作らない。構造上どうしても角が出来ちゃう所もありますが、カーブを多くしています。尖ったものは無意識に不安になったりとかするので、壁もカーブをにしているし、観葉植物の葉っぱも全て丸い物にしていて、クリニック滞在中に安心感が増すようなデザインにしています。

 

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写真:待合スペース

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写真:待合スペースからの景色

 

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写真:お部屋の標識

 

img_q7 この記事を読まれている方へ一言お願いします。


 IMG_4171妊娠中は不安なことが尽きないと思いますが、それを相談できる場所って意外と限られています。何でもいいから相談出来る場所でありたいと思っております。相談の結果、検査を受けないことになっても構いません。そもそも検査を受けるかの判断は知識がないと出来ないと思っています。どういう生まれつきの病気があるかも知らないでしょうし、胎児期に治せる病気があることも知らないからです。「どんな病気があっても産むから出生前検査は受けないと決めてます」と言う方に度々出会いますが、生まれる前に知ることで赤ちゃんを安全に迎え入れることができることを知っているのか不安に思います。通常の妊婦健診だけを受けて出産し、赤ちゃんを亡くした親御さんが、次の妊娠時に受診をしてくれますが、本当は1回目の妊娠からそんな辛い思いをしなくていい世の中になればいいなと思っています。
胎児クリニックは生まれる前にいくクリニックですが、胎児が自ら歩いていくことはできないので、ぜひ連れてきて頂きたいと思っています。

 

 

 

img_q8次にご紹介頂く 『アパホテル&リゾート東京ベイ幕張 総支配人 藤井 力也 様の「ここがすごい!ここが魅力!」を教えてください。


  藤井さんは、アパホテル&リゾート東京ベイ幕張総支配人をされているだけあって、人望と行動力がピカイチだと思います。ホテルでのおもてなしはもちろんのこと、海を安全に、浜を綺麗に、街を活発にと、幕張という街を盛り上げるためのプロジェクトリーダーという感じです。藤井さんの周りにいると楽しいことがたくさん起きるので、ぜひ皆さんにもっと知ってもらいたいです。

 

 

 

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とても優しい口調で話してくださる林院長でした。
率直に、10数年前の自分が妊婦だった時にこの様なクリニックがあったらよかったのに!と思いました。
妊婦さんは赤ちゃんに対して期待と不安でいっぱいで10カ月過ごします…海外で胎児診療が当たり前ということに驚き、日本も早く希望者全員が当たり前に胎児診療が受けられる様になればいいと強く感じました。アパホテル&リゾートの47階にあるクリニックとは思えないとっても綺麗な施設です。
その一つ一つに林院長の優しさや気配りが行き渡っていました。林院長、どうもありがとうございました。

 

 

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