回復のために⑦ 自他の境界を分かる

ACの人間関係と距離感
他者との関係が上手く作れないのは 親の過保護・過干渉というものが大きくありました
子どものすべてを取り込んで支配・コントロールする親との関係でした
子が親離れできない 親が子離れできない
この関係性だけを学んで大人になります
自分と家族のメンバーとは「他人ではなく同一」が刷り込まれます
子どもは家族内の不安と恐怖で 親にしがみついていなければ命を落とします
子どもは自我を育て確立することを無意識にやめてしまいます 親が奪うのです
家族以外の他者とのコミュニケーションを学ぶことがありません
親は子を自分の分身どころか 自分そのものとして子を育て
子はそれが愛されている証だと受け止めて育ちます
一卵性親子 などと言われます
親子の間には「家族であっても他人である」という当たり前の認識が存在しません
親は子の内側にまでずかずかと入り込んで来ます
親はこうすることが愛だと思い込んでいます
当然ながらこの関係には自他の境界がありません
ACはここからの解放を目指すことになります
まず「私はこの世界に たった一人で存在している」ことを分かることです
家族やきょうだいや親戚がいても 「自分」という存在はひとつだということです
自分の人生の時間は 他の誰でもない自分のために使われる ということを分かることです
自分とそれ以外の他者は 違う人間なのだということを分かります
ACにとって「孤独」は 恐怖と不安以外の何者でもなかったのですが
孤独であることを受け入れ それを楽しむことができるようになります
今まで自分を縛り付けてきた家族 親と決別することを決めます

回復のために⑥ 過去を終わったこととして手放す

ACは過去に生きています
インナーチャイルドが 成長しないまま あの頃で時間が止まっています
過去の恨み憎しみ悲しみは すぐ側で生きています
きっかけがあればいつでもすぐに蘇ります
これらを手放すことが必要です
過去に囚われすぎていることで 今も未来も手に入れることはできません
終わらない悲しい過去にしがみつくのは それが終わらないからです 終わらないから執着が残ります
インナーチャイルドの癒しの過程で 今まですべて自分が悪いと思っていたことは
実はそうではなくて 親のせい そう育ったせいだと分かることが大切です
自分が悪いのではない 親が悪いのだと分かることです
ACにとって一番大切な(まだ自分が求めたものを何も貰っていない)親です
愛着はたっぷり残っています
それを手放すのです 諦めるのです 覚悟して「もう貰えない」と分かるのです
できれば親に向かって「この世に生んでくれたこと」には感謝しましょう
「ただ 育て方を間違えたね」と言っても構いません
これで親から離れることができます
親との関わりを 離れた距離から眺めることができます
自立の第一歩です

回復のために⑤ 自己愛を育てる 自己評価を上げる

ACが他者とのコミュニケーションを上手く取れない原因の大きな一つ
健全な自己愛がとても低いことです 
ほとんどないと言ってもいいほど自己愛が低いのです
自分を愛せない ということは他者も愛せないということです
自分を愛することができない人が 他人を愛することなどできません
自己愛というのは 簡単に言えば「自分が好き」ということ
(これが過剰だとナルシストになってしまうのですが)
ACはこれが苦手 基本自分のことが嫌い 
好き という時も「条件付き」です 条件に合わないと「自分なんて嫌い」になります
好きも嫌いも丸ごとひっくるめて好き 自分を愛する ができません 無条件で自分を愛する ができません
育ちが原因です 親からもらったもの
親は自分が育ったように 自分の子どもを育てます
親の言う通りにしたら「好き」 言うことが聞けないなら「嫌い」と育てます
親の言うことを聞いたらモノを与える 聞けないなら罰を与える
子は親からすべてを学びます
条件付きの愛で育った子どもは 自分のことも条件付きでしか愛せません
まず自分に向けて 生まれて来たことへの歓迎 ここにいてもいいんだということを確かめます
原家族では歓迎されていないので 実感を得られるまで確かめます
親には愛されなかった分 自分で自分を愛する 生き直しの作業です

回復のために④ インナーチャイルドと出会う

インナーチャイルド 内なる子ども
自分の中のもう一人の自分 とも 本当の自分 ともいいます
回復への第一歩はこのインナーチャイルドと出会うことです
本来 子どもは自由奔放で 笑顔で楽しく生きています
健全な家族に生まれた子どもは 自分がこの世に生まれたことを歓迎され たくさんの愛情表現を受け 幸せを体験しながら育ちます
自我の確立とともに感情の言語化もできるようになり 自己肯定や自尊心も芽生えます
インナーチャイルドも子どもの成長と並行して生きます
ACにはこれらがまるまる欠落しています
子どもは 強い恐怖 長く続く不安 例えばDV ネグレクト 無言のコミュニケーションなどに晒されます
そこではインナーチャイルドの成長が止まっています
具体的には恐怖の体験を「記憶から消して」なかったことにします その間の記憶が抜け落ちます
その時の感情も「なかったこと」にします 恐怖も不安も悲しみも何も感じなかったことにするのです
そうしないと生きていけないからです 無意識に本能的に子どもは「なかったこと」にします
その子には もはや自由奔放な表現はありません
そんな子のインナーチャイルドは 潜在意識の奥底にたくさんのブロック(身を守る壁)を作り 身を潜めて隠れています
長い間 抱きしめられることもなく 温かい言葉かけもしてもらえずに震えています
それを探し出して言葉をかけます 笑顔で 優しい言葉をかけます
驚いて身体を固くするかもしれません 言葉をかけてあげます
「やっと見つけた 今まで寂しい思いをさせてごめんね もう大丈夫 もう心配しなくていいよ もう怖くないよ これからはいつも一緒だよ」
インナーチャイルドが安心して 微笑むまで言葉かけをします

回復のために③ 「今ここ」を感じる

ACは過去の悲しみ恨み憎しみとともに生きています
幼児期の悲しみ 遠い過去の悲しみを脇に抱えています
いつでもその蓋を開ければ、昨日のことのように記憶は蘇ります
あの頃の傷が癒されていないのです
今も生々しく傷口は開いています
過去の悲しみでいっぱいいっぱいで 現在そして未来の自分をイメージすることができません
悲しい 満たされない過去を諦め 手放すことが必要なのです
終わったことを終わったこととして受け入れる そして手放す
それができて初めて「今ここ」を生きることができるようになります
そのためにはどうしたらいいのでしょう
今ここを生きていない自分に気づくことです
過去の悲しみに 未だに囚われている自分に気づくことです
過去を手放さなくては 現在も未来も来ないことを自覚することです
ACの潜在意識=無意識 の中には 幼児期の悲しみを抱えたままのインナーチャイルドがいます
悲しみのあまり 大人になれないでいるのです
そんなインナーチャイルドを探し出して 出会うことから始めます

回復のために② 欲求に気づく

ACが抑え込んできたのは 感情とともに欲求でした
というより 幼児期に満たされないままの欲求が終わらなかったのです
満たされない愛情欲求 
愛されている 歓迎されているという実感が持てないまま 大人になりました
愛されたという満足があれば 自分を受け入れ(自己受容)自分を愛し(自己愛)自分を肯定(自己肯定)できたのです
それができないまま大人になりました
原初的な欲求が子どもの頃で止まっているので
その分 構って欲しい 分かって欲しいという欲求はとても大きいのです
でもそれを言葉にすることができません 黙って 非言語で訴えるのです
もちろん回りにはそれが理解できるはずもなく 長い間 見捨てられた感覚がありました
ACからの回復のために まずこの欲求に気づき それを言葉にすることです
「〜したい」「〜が欲しい」と言葉にするのです
言葉にするのと しないのとでは その差は歴然です
自分の内側に閉じ込めていたものを言葉にして 自分の外に出す
それを自分の耳で聴くのです
ここで初めて自分の欲求を客観的に知ることができます
この作業はとても重要です
欲求を言葉にすることができるようになると 感情もより言葉にできます
自分の中に立ち現れる欲求のその根本に 感情があるのです
「〜したい」「〜が欲しい」のはなぜ?と自分に問いかけると
「〜だから」という理由が見えてきます これが感情
いろいろな欲求は 辿っていくとどんな感情から生まれるのか が分かります

回復のために① 感情に気づく

ACは長い間 感情に蓋をしてきました
本能的に 無意識に「感じる」ことをやめたのです それは自分の命を守るために
あまりにもショッキングな風景に出会うと「見なかったこと」にして「記憶を消して」生き延びてきたサバイバーです
無意識の奥底に恐怖と不安の記憶を沈み込ませて 思い出すことがないように蓋をしました
それから後は自由奔放な 無邪気な子どもらしい感情の発露をすることもなく生きてきました
生きづらさ 不全感の根っこはここにあります
健全さを取り戻すためには 蓋をした感情を解放することです
ACの感情表現はネガティブなものの方が多いようです
恨み 憎しみ 悲しみ こんな負の感情を「言葉にして外に出す」ことをせず 自分の内側に蓄積させます
長い間の癖です この癖を捨てること やめることに取り組みます
感情を言語化することができない代わりに「感情的に」なる キレることを得意としていました
これもやめる必要があります きちんと言語化できるように訓練します
感情を言葉ににして他者に伝える 他者がそれを受け止め 言葉を返す という言葉による交流を体験します
これができるようになって初めて「自分の気持ちが相手に伝わる」喜びを知ります 
そして逆のことも 今までは他者の気分感情を受け止めることなどできなかったのが できるようになります
ACは楽しい 嬉しい 幸せといったポジティブな感情を抑えています 抑えるというより「禁じて」いるようです
楽しんではいけない 幸せになってはいけない といった禁止令をやめることです
長い間自分を縛り付けていた禁止令を解くことで 
自分がここに生きて暮らしていること 人生は悲しい苦しいことばかりではないことに気づきます
自分を祝福し 愛することができるようになります

回復への道

今までAC共依存が抱えるたくさんの不全感を書いてきました
自我の感覚がない しっかりした自己像が持てない
自立・自律できない 感情のコントロールができない・・・などなど
それは人が生きていくという上で基本的にとても重要なことですが
ACにはそれができませんでした それらを獲得する自由を チャンスを奪われていたのです
今までできなかったことで どれほど深い不安・今日をを抱えてきたことか
いったいこの不全から回復できるのでしょうか?
間違いなく回復できます
それはまるで生き直しとでも 生まれ変わるとでも言えるほど大掛かりですが
自分で自分を諦めない限り 必ず回復できるのです 健全さを取り戻すことができるのです
もちろん時間もかかるでしょうし 途中で「慣れ親しんだ感覚」に戻りたくなるかもしれません
でも 諦めない覚悟があれば回復できます
カウンセラーはそのお手伝いをします お手伝いだけです
クライアントの人生そのものに介入して あれこれと指図することはありません
クライアントの生き直しと自律を見守るのです

自分を変えようとしない 他人から学ばない

ACはなかなか自分を変えようとしません
言い方を変えると 変わるのが怖い 変化していくことに抵抗する
自分を変えるのに参考になる人は周りにたくさんいます
ACはそんな他人からも学ぼうとしません
人だけでなく本や芸術作品 あらゆる創造物
作者の人生観 価値観 学ぶ対象はたくさんあります
もちろん興味は示すのですが それを自分の側に引き寄せて 自分の内側に取り込もうとしないのです
そして変わりたくない自分がいることにも気づかないのです
例えば人からのアドバイス助言
これをなかなか受け入れようとしません 聞いている振りはするのですが
自分のやり方に固執する そのやり方は幼稚なので いずれ失敗しますが
失敗しても なぜ失敗したのかを学ばない 人のせい 周りの状況のせいにする
自分が失敗したのは 〜のせいだ 〜だからだ と
変わりたくない自分がいるのはなぜでしょう
インナーチャイルドはあの時に成長が止まったまま
それを片付けて終わらせないと 成長できないのです
あの時のあの出来事がずっと心の奥底に引っかかったまま
ACが「今ここ」を生きられない理由がここにあると ワタシは見ています
ACは過去の悲しみに囚われ 過去に生きているようです

愛って何?幸せって何?

ACには愛する愛されるという体験がありません
幸せな体験もありません
愛って何? 幸せって何?という問いは当然なのです
幼児期の充分な愛情体験がありません
抱きしめられる 撫でられる 生まれてきたことを歓迎される 笑顔を向けられる
愛してると言われる たくさんの言葉かけをもらう
こんな一連の 言わば愛のシャワーを浴びたことがないのです
誰でもそうですが 体験しなかったことは分かりません 認識も理解もできないのです
人にしてもらったことは体験や感覚の記憶として残り 今度は自分が人にしてあげる ができます
機能不全家族とは この体験や記憶の受け渡しの機能が壊れているということです
愛するという感情が分からない 表現できない その代わりを例えば過干渉や過剰な世話焼きで表現しようとします
愛する(感情)→過干渉(行動)に替えて表現しようとします そうするしかないのです
幸せという感情が分からない 表現できない その代わりを例えばお金を得ること 使うことで表現しようとします
幸せ(感情)→お金(モノ)に替えて表現しようとします そうするしかないのです
感情はそのまま言葉にして口に出せばそれでいいのですが それが分かりません 
行動やモノに替えてしまうので 健全なグループからは理解できない「普通」じゃない人に映ります
これが対人関係につまずく第一の理由だと ワタシは見ています