修善寺を出発した一行は、お昼を摂るため一路「沼津港」を目指す。
途中、狩野川と並行して、富士山が左の車窓に出現する。
赤い気球がのんびりと浮かんでいたので、写真を撮ろうとスマホを用意し、もう一度富士山方面にレンズを向けると、さっきまで浮いていた気球は綺麗に消えており、なぜか代わりにパラグライダーが飛んでいた。
40分ほどで沼津に着いたのが飲食店のピーク時間のど真ん中、12時台であった。
N氏の先導でコインパーキングから漁港の食堂街に入っていく。
入ってすぐの左側へ進むと目当ての店の外には予想通り10人以上の列ができていた。
30分近く並び、やっと先頭付近にある、椅子に腰を据えることが出来た。
ここまで辿り着いて、やれやれだね。
という感じだったんだけど、「中に入ってからも座って待つみたいですよ」と仲間の一人が言う。
食べ終わって出てくる人が開けた引き戸の先を見ると、確かに座って待っているし、この扉のガラス部分からも向かい合って待っている姿が確認できた。
「中に入ってからも2組くらい待っているみたいですね」とボクは感想を漏らす。
座っている所からは店外に貼ってあるメニューが大きく見えるので、みんなで品定めをしていた。
「何にするんです?」と聞かれたので
「刺身も食べたいし、ここはとんかつもあるから迷うね」と言うと
「確かに目移りしちゃいますね」
という会話になったが、メニューの中に刺身と揚げ物がセットになっているサービスメニューの定食があったので、それにすることにした。
中にある待合の席に移動して座る。
ソーシャルディスタンスの観点からか向かいは空席になったままだ。
カウンターがまとまって空いたから、次はボク達かな?と思ったが、お呼びがかからない。
そうして待っていると、「もうちょっと待っててくださいね。こちらのテーブルを今片づけますから」と店員さんがひょこっと顔を出して言う。
テーブル席に案内され「今お茶をお持ちしますね」とお手拭きを持ってきてくれる。
改めて店内を見渡すと、外では行列していたのだが、無理に押し込めることをしないで、適度に空席を空けながら回していることが分かった。
お茶を持ってきてくれたので、それぞれ注文をした。
ボクは「魚河岸定食をライス大盛りでいいですか」と言うと「定食は大盛りサービスですよ」という。
何と太っ腹なんだ。
ボクだけ揚げ物が付いているメニューだったので、海鮮丼の「にし与丼」を頼んだ他のメンバーには先に食べ始めてもらった。
N氏が「今の時間、グループでビール1本までだって」と壁に貼ってある注意書きを見てつぶやいた。
そして「1グループビール1本までか、生ビール1杯までって、瓶ビール1本は理解できるけど生を一人一杯じゃないところが肝なんだろう」という結論になった。
人気店で混んでいるから、もっと扱いが「ぞんざい」かと思ったが、大変気持ちのいい接客で、家族連れの子供たちにも愛想よく応対しており、割烹料亭の雰囲気を醸し出していて、すっかりこの店のファンになってしまった。
遅れて運ばれてきた料理を、味わう暇もなく掻き込んで完食した。
こんなことなら揚げ物はやめておけばよかったなと思いながら会計を済ませ、店を出ると、
ボク達が並んでた時と同じくらいの列が続いていた。