機動の戦士 第九話 ~不安~


「何!?ビームを打ち落とした!?」
人間が亜光速のスピードに反応できるのか?
そんな思いを感じる暇もなくTHE-Oの着地点めがけてクローの中央から次弾が発射される。
ミライは機体左側のバーニヤを全開にして辛うじて光の矢から逃れた。
対MS戦の勝敗を決するのは何か?
パイロットの技量なのか,それとも機体の性能か。
そうではなく相手の次の動きを予測する能力が勝負を決める最大の要因ではないか?
そうした推論の元に実験が組まれ,生み出されたのがローズ達だった。
ローズは“予測”能力に特化した実験のシリーズであった。
先のミライの攻撃をかわしてすぐに攻撃に転じたのも,数百を超える回避パターン及び次の攻撃における動作の組み合わせを瞬時にシミュレートして最大の効果が上げられる方法を選択した結果だ。
コンピュータをも凌駕する演算処理能力を持たされているのが彼女のシリーズであり,そのシリーズ中でもローズは最強の個体であった。
現に第二次ネオジオン抗争を生き延びたのは彼女だけなのだから。
しかし,ローズは内心焦っていた。
今まで初弾を外したことなど一度も無い。
例え一撃で倒せなかったとしても必ず二の矢,三の矢を放つときには相手を撃破していたのに。
「どうして!?演算は1507通りやった!検算も300回やったのに!」
平静を保てなくなっている自分にも気が付き,彼女は苛立った。
ミライも落ち着いて考える暇など無い状態であったが,自分自身の回避能力に疑問を感じていた。
「何故だ?なんで俺はこんな動きができる?」
また,力がどんどん吸い取られるような感覚に恐怖を感じていた。
この戦闘が始まってまだ30秒程度。
しかし1時間以上も連続して戦っているかのような疲労感があった。
カラダが重い・・・
モンベツの艦長もメインモニターのディスプレイを見て言った。
「妙だ・・・ミライ大尉の動き方・・・」
昨日までのミライは確かに普通の男だった。
ニュータイプのセンスのカケラも感じられなかったはずだ。
一夜で人の革新など起こるものか?
顰め面の奥の思いを汲んで,丁少尉は艦長に告げた。
「ミライ大尉の機体には,ジュピトリス製MSのブラックボックス的な技術がそのまま使われているんです。」
「どういうことだ?」
ユリコはモニターを睨んだまま訊き返し,訝しんだ。
「THE-Oはシロッコの機体そのものなんですよ・・・連邦軍にとって未知の技術がそのまま詰め込んであるんです,ジオンのものでもムラサメでもない,オリジナルのサイコミュシステムが。」
グリプス戦役の頃,コロニーレーザーの攻防戦で命を落としたパプテマス・シロッコ。
彼が強力なニュータイプであったという噂は,半ば伝説となって戦場の端々の部隊まで聞こえ及んでいた。その男がハンドメイドで自らの専用機として組み上げたワン&オンリーの機体がTHE-Oである。
「ローズ!その機体は只者ではない!気をつけろ。」
マッドアングラーで黙して状況を見守っていたク・マオーは機体そのものから感じるプレッシャーに思わず口を開いた。

つづく
第八話← →第十話
このオハナシはフィクションです。
登場人物もストーリーも出所にピンと来るヒトはゴマンといるでしょうが
フィクションなんです。

投稿者:

みらい

西森未来と申します。 カメラとベースの修行中です。 自転車が大好きです♪

“機動の戦士 第九話 ~不安~” への5件のフィードバック

  1. 先生!MSの生産が追いつきません!
    Hi-νがまだ未完成だというのにあさってガンタンクが届きます。

  2. お疲れ様です!続編を待っていました!
    ローズ少尉は「パプテマス・シロッコ」と戦っているのも同然ってことなんでしょうか。それとも、ニュータイプの「先読み」の素質が開花したのでしょうか。先の展開が楽しみです。わくわくv

  3. >トドマー中尉
    早く新型をロールアウトさせないと
    あのメカに乗るハメになりますよん♪
    次か次々回にはトドマー中尉が大活躍の予感がします。
    >ローズ少尉
    残念ながらミライは「普通の人」なんです。
    もうすぐ物語は佳境ですよ♪

  4. >早く新型をロールアウトさせないと
    >あのメカに乗るハメになりますよん♪
    すごいリアルな脅し文句だあ(笑)

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