ミライ隊,完成


作りかけで放置していたプラモデルをようやく完成させました。
いやぁ,放置期間は約1年でした。
ゴメンよ,ボクのズゴックEちゃん。
ハイ,今回作ったのは「MSM-07E ズゴックE」ですよ。
一年戦争中にジオン公国軍突撃機動軍所属マ・クベ中佐(当時)が立案した
「統合整備計画」によって改良されたMSM-07 ズゴックの性能向上機って設定なんですって。
“機動戦士ガンダム0080ポケットの中の戦争”に登場した
ジオン公国軍の水陸両用モビルスーツなのです。
今回も例によってボクのオリジナル設定で塗装しております♪
ベーリング海での作戦に投入された機体ってことで白をベースに塗ってみました。
でね,これでようやく完成ですよ!!!
ミライ・ウェスト大尉率いる隠密部隊が♪

ちなみにミライ・ウェスト大尉ってのは,
ボクが2009年頃に書いていたガンダム小説の主人公です。
ガンダムのプラモデルでCGジオラマを作って,
それにお話をくっつけて創った同人誌的小説なのです♪
ちなみに第1話はコチラ→http://futurewestwoods.makusta.jp/e180058.html
そう言えばⅡが途中のまま放置してましたね・・・
ん?
なんかミライ隊に変なの混じってる。

機動の戦士Ⅱ ~宇宙のアイ編~ 第一話


第一話 プロローグ
「丁技術中尉!システムのインストール完了しました!」
月面都市グラナダにあるアナハイム・エレクトロニクス社のモビルスーツ開発部門,
その格納庫で丁・太楼はコックピット内で作業していたシステムエンジニアの報告に,
無言のまま軽く手を振って応えた。
「ネオ・ジオンにまだこれほどのMSを建造する技術があったとはな・・・」
丁は通常の倍以上の圧迫感を与えるMSを見上げながら独り言をこぼした。
「しかし・・・」
憎々しげに腕部の装飾を睨みつつ思った。
ネオジオンの数度の反乱後,アナハイム社には吸収合併したジオニック社やツィマッド社のエンジニアが,
その独自の技術と情報を盾に重要な部署,そしてポストに幾人かが就いていた。
このMSの解析,再構築に協力を要請した時も,
その契約書には「エンブレム」を再現する,
との一文があった。
前回同様,丁の任務はニュータイプ専用MSの分析であったが,
連邦軍に軍籍を置いていたジュピトリス製の機体の場合とは違い,
今回はネオ・ジオン由来の機体だ。
研究者の立場からは興味はそそられるものの,
連邦の士官としての立場では「エンブレム」に拘る元ジオンの技術者の心境は到底理解出来なかった。
「それよりもだ!なんなんだ,このカラーリングのオーダーは?あの人はまた!」
つい声を荒げた時に,コックピットから降りてきたエンジニアが問いかけた?
「中尉はこのMSに乗るパイロットをご存じなんですか?」
白亜の機体色に紅い動力パイプの巨体を見上げながら丁は吐き捨てるように言った。
「知らん!上からは何も知らされていないがな・・・こんな色のMSに乗りたがる男も一人しか知らん!」
~つづく~
この物語はフィクションです。
登場する人物,団体は元ネタが容易に想像つくかも知れませんが関係ありません。
ただし当ブログに名前を連ねた方はご注意ください。
ですが関係ありません。
機動の戦士 第一話

機動の戦士 第十六話 ~激情~


「お前か!?お前が艦長を!」
アラートが指し示す方向に機体を向け,ミライは言い放ち
同時にスロットルペダルを踏み込んだ。
激突する深紅と白亜の機体。
「貴様こそローズを殺した!」
ビームの発振がプラズマの火花となり,周囲に降り注ぐ。
2機の巨体は激突を繰り返しながら交錯し,その都度互いの思念が叫び声をあげた。
否,事実怒声もあげていた。
もはやその思惟の疎通はニュータイプ同士の共鳴か,
機体の接触回線すらかも判らなくなっていた。
紅いファンネルがTHE-Oを狙うが,2対のビームサーベルで薙ぎ払われた。
降り注ぐビームの矢を自らのビームで振り払いながら,
その全身に装備されているバーニアを全開にしてミライはク・マオーに肉薄し,
ついにはライフルさえも切り裂いた。
互いの機体がビームサーベルを介して対峙する。
「彼女は強化人間,それもクローンだった!私たちは戦争のために作られた存在だ!」
ナイチンゲールⅡの腹部に内蔵されているメガ粒子砲がTHE-Oの左腕を吹き飛ばす。
同時にTHE-Oのスカート部に内蔵された隠し腕のビームサーベルが赤い機体の右足を切り裂いた。
「だからなんだって言うんだよっ!テロリストの言い訳か!?」
両機ともに損傷率が高く消耗も激しいはずなのだがまったく動きは鈍らず,
むしろそのスピードは徐々に向上していった。
2機がまたビームを介して対峙する。
「研究所には実験に失敗し,既にヒトとすら呼べなくなったヤツもいる!戦いの無い世界は我々の存在を否定する!」
ク・マオーもローズ・セブンスコードもネオジオンに軍籍を持っていたが,
それは事の成り行きでしかなかった。
彼らに政治的思想などはない。
そもそもの彼らの戦う理由は自らの存在証明なのだ。
「思想などという陳腐な言い訳は持たん!」
ミライは絶句した。
そんな悲しいことってあるかよ・・・
人を殺すことでしか生きることを許されないなんて。
THE-Oは生気を奪われたかのように,Gファイターが展示されていた科学センターに落下した。
ナイチンゲールⅡが上空からビームサーベルを構え,突進してくるのが見えた。
それでも身体が動かない。
そんな理由で戦う人間に,抗う術を持たない。
「俺は今までなんのために戦ってきたんだ?」
猛進してくる紅いモビルスーツを眺めながら自問自答する。
「我々の存在理由!」
今まさにビームサーベルが振り下ろされんとした時,
突如としてナイチンゲールⅡの動きが止まった。
ミライには何が起こったのかは理解できなかった。
「ミール・・・」
深紅の機体は,旧世紀の宇宙ステーションのコアモジュールを見ていた。
~つづく~
第十五話← →最終話
この物語はフィクションです。
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機動の戦士 第十四話 ~守護~


爆発の光に呑み込まれるズゴックEをモニターで確認し、
ク・マオーは叫んだ。
「貴様ぁ!!よくもローズを!」
ク・マオーは怒りの感情が噴出したことを自分自身で驚いていた。
数条のビームの光がTHE-Oに向けて放たれる。
直撃はしなかったものの,至近距離に着弾してもミライの機体はまったく動かなかった。
ミライの心は,死にゆくローズの意識に共鳴していた。
ローズの心が生まれた場所に還る瞬間の感覚をミライは共有した。
ミライの心は死を体験したのだ。
ミライの心臓は拍動していた。
彼の肺も呼吸を続けていた。
しかし,その精神は死を経験したのだ。
受けたサイコダメージのレベルは最早図り知れない。
その時点でTHE-Oはパイロットを喪失した。
いかにパプテマス・シロッコの開発したサイコミュシステムでも,
パイロットが死んでいてはシステムが反応することはない。
THE-OがナイチンゲールⅡの攻撃に何の反応も示すことがなかったのは,
ミライの身体がその中に精神を容れていなかったからだ。
ク・マオーは更にTHE-Oに肉薄し,ビームライフルの銃口をコックピットに向けた。
次の一撃を受ければ白亜のMSは四散するであろう。
「モンベツ,最大船速!」
ユリコは叫んだ。
「しかし,それではミライ機に接触・・・」
丁の言葉を遮ってユリコは続けた。
「かまわん!このまま直進してTHE-Oを撥ね飛ばせ!」
ビームの直撃で灼かれるより,物理的な衝撃の方が助かる確率が高いであろう。
ユリコは直感的な判断でミライ機にビッグトレー級戦艦の進路を向けた。
ク・マオーの人差し指がトリガーを引いた瞬間,
モンベツはTHE-Oをすくい上げるように弾き飛ばした。
そして紅い機体から放たれたビームはモンベツの艦橋を掠め、水平線の彼方へと消えた。
「チィッ!この私が感情に流されたというのか?」
自分に接近してきた巨大な艦にまったく気が付かなかったとは。
ク・マオーはモンベツとTHE-Oから距離をとった。
冷静な自分を取り戻すために。
ビームの熱波に煽られ,艦橋を覆っていた厚い強化ガラスは全て微塵に飛び散った。
破片の下から這い出た丁は,自分が生きていることを確かめた後,艦長を見た。
ユリコはいつもの毅然とした姿勢のまま,艦長席に座っていた。
「艦長,無事でしたか?」
あの爆風の中,艦長然たる態度を崩さないユリコに畏怖の念さえも感じたが,
ユリコ艦長を見て丁は言葉を失った。
「・・・艦長?・・・」
恐る恐るかける声は震えている。
艦長席から立ち上がれなくなっているユリコはかすかに唇を動かした。
「・・・まだ・・・,生きているよ・・・」
左目だけを丁に向け,ユリコは応えた。
ビーム粒子は,ユリコの右半身と艦長席を焼き,その両方をまさに“溶接”していたのだ。
「艦長!今!今すぐ助けます!」
丁自身,救う方法がないことを知りながらも叫んだ。
「私はいい・・・自分のことは自分で良く判っているつもりだ・・・ミライ大尉は?」
丁は強化ガラスの無くなった艦橋から,肉眼でTHE-Oを確認した。
「THE-O!確認しました!しかし動きがありません!」
「そうか・・・,しょうがないヤツだな・・・,私が迎えに行ってやる・・・」
~つづく~
第十三話← →第十五話
この物語はフィクションです。
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機動の戦士 第十三話 ~解脱~


ズゴックEの放ったビームがTHE-Oの前面で爆炎に変った。
「当たった!」
しかしそれはビームライフルを直撃した爆発で,機体自身にはそれほどのダメージはなかった。
飛び道具を失ったミライは両腕と二つの隠し腕にビームサーベルを装備し,
近接戦闘モードのプログラムを走らせた。
とは言ってもミライの意識は既に無く,
THE-Oのシステムがそうさせているのだったが。
ローズはそれと知らず,とどめを刺すべく白いMSに近づいて行った。
その時,2機のMSの間を,カラフルな機体が通過して行き,
ローズの注意が奪われた。
二人の中尉の乗った戦闘機は攻撃する能力を持たなかった。
そのため,戦いの思惟もまた持っておらず,THE-Oのサイコミュは彼らを感知しなかった。
無意識のままに戦闘を強いられているミライには気づく術さえなかった。
ローズのデータベースには目の前に突然現れた機体の情報は無かった。
この予期せぬ出来事は,ほんのわずかではあったが
半ば有機コンピュータと化した大脳の処理能力を遅滞させてしまっていた。
トドマーとネコサーマは二つの巨大な人型の間をすり抜け,
両機にはかすりもせぬまま海原に落ちていった。
しかしながらこの二人の行動は,結果的にミライに,
否,THE-Oに有利に働いた。
そしてローズには致命的なミスをさせることになった。
「いない!?」
見失った?戦闘中に呆けていたのか私は?
ズゴックEのコックピット内にアラートが鳴り響く。『敵は後ろ』だと。
ローズの一瞬の虚をついて,THE-Oはその機体を移動させていた。
「・・・これで・・・終わるのか・・・」
かすかに残ったミライの意識で感じられることは,これが精一杯だった。
すでに感覚の無くなった両手に握ったレバーを動かした時,
THE-Oの装甲を通して,ミライの心の中にある景色が膨らんで見えた。
ゆっくりとした時が流れる音の無い白い闇の中,誰かが話しかけてくる声が聞こえる。
ココは何処だ?
まだ子供だった頃の私?
大佐と初めて逢った時・・・
「お前は何番目だ?」
ク・マオーは軍施設にはおよそ似つかわしくない少女に声をかけた。
少女は猫の額ほどの花壇に咲いた薔薇の花から視線を動かさずに,
小さいがはっきりと判る声で返答した。
「7番目。」
小惑星基地「アクシズ」内のニュータイプ研究機関に配属されてから,
マオーは同じ容姿を持つ少女を何人も見ている。
ここでは第二世代のクローン型強化人間の計画が進行していると聞かされてはいたが,
詳細な説明はされてはいない。
それは彼も被験者の一人であったからだ。
「その花,好きなのか?」
今度は声に出さず,少女は頷くだけだった。
「旧世紀の音楽にな,ブルースってのがあるんだ。7thコードってのはブルースに使われるカッコいいコードなんだぜ。」
唐突に変った話題を理解できず,少女はマオーの顔を不思議そうに見上げた。
その少女の目を見つめながらマオーは言った。
「今日からお前の名前は“ローズ・セブンスコード”だ。」
生まれてから一度も音楽を聴いたことがない彼女にとって,
和音など知る由もなかったが,彼女は心の中でその名を反芻した。
「私は・・・ローズ・・セブンスコード・・・」
ローズ・セブンスコードはその瞬間に生まれた。
7thコードは三和音の中に根音から7番目の,本来なら不響である音を入れることによって
より良い響きを持たせた四和音だと,ローズは随分あとになってから知った。
“7番目の不響音”
なんて自分にぴったりな名前なんだろう。
それでも不響和音にはならずに,音楽として,和音として成立しているセブンスコード。
生命の繋がりのシステムに入ることができない自分の立ち位置に思いを馳せ,
それでも世界を構築できるということに気付かせてくれた名前。
その名前を得たと同時に“自我”を得ていたことに改めて気がついた。
また,自我をくれた男に特別な想いを抱き始めていたことにも。
爆発するコックピットの中で
ローズは光に飲み込まれ,消えていった。

つづく
第十二話← →第十四話
この物語はフィクションです。
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ですが関係ありません。
最後のバラの写真はフリー素材です。
残念ながらボクの作品ではありません・・・

機動の戦士 第十二話 ~消耗~


「私も出ることになるとはな・・・」
ク・マオーは待機していた深紅の機体のコックピット内で独り言ち,
静かにその両の瞼を開けた。
「ナイチンゲールⅡ,出るぞ!」
大型潜水艦「マッドアングラー」から出撃したMSはまっすぐ曇天に向かって上昇した後,
弧を描いて陸地に向かって飛翔した。

ミライは朦朧とした意識のまま戦っていた。
対する敵はニュータイプ,もしくは強化人間であろうことは理解していたが,
もうそんなことはどうでもよかった。
敵の思惟が機体を通じて自分の中に入ってくる。
それはとてもシンプルであったが機械的で莫大な情報量を持ち,
その感覚はミライのシナプスを焼き尽くすような熱を帯びていた。
しかしTHE-Oの機体,そのシステム自身は,ミライの本能である生存欲求に直接働きかけていた。
『生くるなら戦え!』

高度な演算能力を遥かに上回る得体の知れないモノとの対峙に,ローズも焦燥していた。
「コイツっ!なんで・・・・なんでだよっ!?」
冷静さを失ってはいたが,それでも自らの能力をフルに稼動させ,目の前の脅威に立ち向かっていた。
「ファンネルさえ!ファンネルさえあればこんなヤツ!」
旧型の中古MSに搭乗している自分が呪わしかった。
「ハマーン様のキュベレイさえあれば!」
ローズ自身は気が付かなかったが,その両眼からは悔しさのあまり涙さえこぼれていた。

「ホントに飛んだな!トドマー中尉!」
「なんだよ!飛ぶと思ってたんじゃないのか!?」
二人の中尉は瓦礫に半分埋まっていた,歴史の闇に消えかけていた兵器で空に飛びだした。
「ネコサーマ中尉,武器の類は使えないぞ!エネルギーが足りない。」
「なんだって!?どうすんだよ!」
複座ではないコックピットに男二人が詰まっている姿はとても滑稽に見えた。
しかし現代の操縦システムに慣れた二人は旧世代の機体の操縦法など知る由もなく,
機器類をいじってるうちにエンジンに火が入り,二人の意思とは反して“出撃”してしまった。
「とりあえず・・・戦場に向かえ!」
トドマーは自分のヒザの上に乗っているネコサーマに言った。
「了解!トドマー中尉,スロットルペダルを踏み込め!」
ネコサーマは「二人羽織」という旧世紀の演芸をネット配信の画像で観たことを思い出し,
独り噴き出して笑った。
「どうした?なにが可笑しい?」
尋ねるトドマーにネコサーマは応えた。
「なんでもねぇよ!生きて還れたら二人でやりたいことを思いついただけだ!」
あと7日あまりで今年が終わることをネコサーマは思い出し,
ドック基地で催されるニューイヤーを祝う酒宴に,尻の下にいる男と行きたいと思った。
~つづく~
第十一話← →第十三話
この物語はフィクションです。
登場する人物,団体は元ネタが容易に想像つくかも知れませんが関係ありません。
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ですが関係ありません。
模型提供:まどとし氏
ベリーサンキュウ!

機動の戦士 第十一話 ~救援~


「貴様,何者だ?」
ユリコは事情を知り過ぎている少尉を問い詰めた。
丁少尉はTHE-Oがモンベツに配備されるとともに
月面のグラナダ基地から配置転換されてきた新任士官であった。
「・・・私は・・・」
床を見つめていた目を艦長に向けなおし,丁は言った。
「私はアナハイム・エレクトロニクス社に出向していた技術少尉でありました。」
彼は,ニュータイプ専用機であるTHE-Oのサイコミュシステムの解析に携わっており,
実使用時の試験データを採取するためにTHE-Oとともに着任したという。
「ミライ大尉はGMで大気圏突入して生還したでしょう?上層部はそこに目をつけたんです。」
先の戦争中,ミライは成層圏近くの戦闘で地球の引力に捕まったものの,
GM単機で大気圏を突破した。
これを軍上層部はミライのこの危機回避能力をニュータイプ的能力の発動の可能性があるとし,
監視下に置くためにそのまま宇宙軍から地上軍へと異例の転属命令を出したのだという。
「その情報は最高クラスの軍事機密と見るが,いいのだな?」
艦長の質問に,丁少尉は力強く頷いた。
「釜に火をくべろ!モンベツ,発進する!」
「モンベツ!発進!」
丁は艦長の命令を復唱しながら,
我ながら馬鹿なことをしていると内心自嘲した。
そして地球に降り立ったばかりのことを思い出していた。
「MTBって乗り物知ってるか?」
独り,基地の食堂で食事をしている時,ふいに声をかけられた。
着任してまだ1週間も経っていない頃だったろうか?
あまりの馴れ馴れしさに警戒心さえ抱いたものだ。
無遠慮に向かいに座った男の顔を見ず,階級章に目をやりながら丁は応えた。
「いいえ,知りません大尉。」
「なんでも荒地を走るための自転車らしいぜ。」
荒地?そう言われても丁にはピンと来ない。
「荒地ってなんです?」
「俺もコロニー育ちで知らなかったんだが,地球には自然のままの地形があるんだってよ。」
丁も目の前に座っている男も宇宙生まれの宇宙育ちだった。
人工的に作られた街に自然の地形は無く,全てが作られた景観だ。
しかし地球には人の手が入っていない土地があり,
そこに行くためには自分自身の力を使わなければいけないらしい。
「今度の休みに行ってみないか?」
それが丁とミライの出会いだった。
千歳基地の南にある湖までの輪行は,
スペースノイドの二人には地獄の苦しみを味わっているようであった。
しかしそこで見た景色は,
丁にとって忘れられないものになっていた。
「あの直後は二度と行かないって思ってたハズなのにな・・・」

~つづく~
第十話← →第十二話
この物語はフィクションです。
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模型提供:ひゅうん@ミライの弟

機動の戦士 第十話 ~協力~


『寒い・・・。なんでこんなに寒いんだ。俺は南国育ちなんだ,雪なんか見たくもねぇ!』
目を開けると視界はすべてグレー一色だった。
見上げる空から降りしきる雪が放射状に広がっていくように見え,
一瞬トドマーは宙に浮かび上がっていくような錯覚に囚われた。
「お,気が付いたかい?中尉さん」
「俺は・・・。生きてるのか・・・。」
トドマーは体中に痛みを感じながらも,手足が動くこと,
そして胸や腹,頭を手で触ってそこにソレがあることを確認した。
錯覚とは言え,死んでしまったらあんな風に空に還るのかとの思いに
トドマーの心と身体が少しだけ震えた。
「ドック守備隊のネコサーマ中尉だ。電源の落ちた脱出ポッドをこじ開けるのは難儀だったゼ。」
GMのものらしい脱出ポッドの横に,そんなに背は高くはないが屈強そうな,
いかにも軍人然とした男が立っていた。
「助けてくれたのか・・・。千歳第七師団のシー・トドマーだ。礼を言う。」
ネコサーマは肩を竦めながら大破したZプラスを見上げて言った。
「気にすんな,俺もヤラれたクチだ。」
そう言いながらネコサーマは,自らのMSが墜落して倒壊寸前となった建物に入って行った。
「トドマー中尉!手伝ってくれないか!」
瓦礫の向こう側から声がする。
瓦礫の山と化した建物の正面玄関(もはや入り口のカタチは留めていないが)には
“トマコー・マイシティ科学センター”と書かれていた。
ここは旧世紀から続く由緒ある博物館で,
科学の発展と進歩の歴史的遺産が収められている場所だ。
古くはアポロの時代のロケットや第一世代のモビルスーツなど,
大半は模型だが一部本物の機体が展示されており,
子供達への科学への興味を育てるためのアトラクションも設置されている。
トドマーは黙って砕けたコンクリートの上を,声のする方へ進んで行った。
倒れた柱に押し潰されているクローバー社製のMSを見つけ,
こんなものまで展示されているのかと,感心と驚愕が入り混じった感情が湧き,
その顔に少し笑みが戻った。
奥のブースからネコサーマの声がした。
「コイツを動かせねぇか?手伝ってくれ。」
およそ兵器とは思えないカラーリングが施された重爆撃機のような機体がそこにあった。
「これは?」
その特異な形状をした機体を見上げながらトドマーは言った。
「コアブースターに開発競争で負けた機体らしいぜ。」
傍らにあった解説パネルによると,
1年戦争当時,MSの支援と戦場までの運搬を目的として開発された機体であることが判った。
しかし,ハイコストなことと,生産工程の複雑さ故,
よりシンプルでコストパフォーマンスの高いコアブースターが正式採用されたらしい。
「こんな派手なヒコーキだか戦車だか判らんモノを動かすのか?狙い撃ちされるぞ!」
半ば呆れてトドマーは言った。
「アンタのお仲間がヤバいんだよ。あのズゴックのパイロットは普通じゃない。」
トドマーが気を失っている間の戦闘をネコサーマは簡単に説明した。
「あのTHE-Oのパイロットもニュータイプなのか?アレの動きも凄まじかった。」
ミライ大尉が?どういうことだ?
思惟をめぐらせながらもトドマーは何もしないよりははるかにマシだと思えること,
目の前の機体を動かすことに力を貸そうと思った。
~つづく~
第九話← →第十一話
この物語はフィクションです。
登場する人物,団体は元ネタが容易に想像つくかも知れませんが関係ありません。
当ブログに名前を連ねた方はご注意ください。
ですが関係ありません。

機動の戦士 第九話 ~不安~


「何!?ビームを打ち落とした!?」
人間が亜光速のスピードに反応できるのか?
そんな思いを感じる暇もなくTHE-Oの着地点めがけてクローの中央から次弾が発射される。
ミライは機体左側のバーニヤを全開にして辛うじて光の矢から逃れた。
対MS戦の勝敗を決するのは何か?
パイロットの技量なのか,それとも機体の性能か。
そうではなく相手の次の動きを予測する能力が勝負を決める最大の要因ではないか?
そうした推論の元に実験が組まれ,生み出されたのがローズ達だった。
ローズは“予測”能力に特化した実験のシリーズであった。
先のミライの攻撃をかわしてすぐに攻撃に転じたのも,数百を超える回避パターン及び次の攻撃における動作の組み合わせを瞬時にシミュレートして最大の効果が上げられる方法を選択した結果だ。
コンピュータをも凌駕する演算処理能力を持たされているのが彼女のシリーズであり,そのシリーズ中でもローズは最強の個体であった。
現に第二次ネオジオン抗争を生き延びたのは彼女だけなのだから。
しかし,ローズは内心焦っていた。
今まで初弾を外したことなど一度も無い。
例え一撃で倒せなかったとしても必ず二の矢,三の矢を放つときには相手を撃破していたのに。
「どうして!?演算は1507通りやった!検算も300回やったのに!」
平静を保てなくなっている自分にも気が付き,彼女は苛立った。
ミライも落ち着いて考える暇など無い状態であったが,自分自身の回避能力に疑問を感じていた。
「何故だ?なんで俺はこんな動きができる?」
また,力がどんどん吸い取られるような感覚に恐怖を感じていた。
この戦闘が始まってまだ30秒程度。
しかし1時間以上も連続して戦っているかのような疲労感があった。
カラダが重い・・・
モンベツの艦長もメインモニターのディスプレイを見て言った。
「妙だ・・・ミライ大尉の動き方・・・」
昨日までのミライは確かに普通の男だった。
ニュータイプのセンスのカケラも感じられなかったはずだ。
一夜で人の革新など起こるものか?
顰め面の奥の思いを汲んで,丁少尉は艦長に告げた。
「ミライ大尉の機体には,ジュピトリス製MSのブラックボックス的な技術がそのまま使われているんです。」
「どういうことだ?」
ユリコはモニターを睨んだまま訊き返し,訝しんだ。
「THE-Oはシロッコの機体そのものなんですよ・・・連邦軍にとって未知の技術がそのまま詰め込んであるんです,ジオンのものでもムラサメでもない,オリジナルのサイコミュシステムが。」
グリプス戦役の頃,コロニーレーザーの攻防戦で命を落としたパプテマス・シロッコ。
彼が強力なニュータイプであったという噂は,半ば伝説となって戦場の端々の部隊まで聞こえ及んでいた。その男がハンドメイドで自らの専用機として組み上げたワン&オンリーの機体がTHE-Oである。
「ローズ!その機体は只者ではない!気をつけろ。」
マッドアングラーで黙して状況を見守っていたク・マオーは機体そのものから感じるプレッシャーに思わず口を開いた。

つづく
第八話← →第十話
このオハナシはフィクションです。
登場人物もストーリーも出所にピンと来るヒトはゴマンといるでしょうが
フィクションなんです。

機動の戦士 第八話 ~接触~


「畜生!モンベツからの増援はどうなってやがる!」
千歳第七師団所属の部隊からはあと数十秒で応援が来ると連絡があったが,
ネコサーマはそれを受けてから永遠にも似た長い時間を感じていた。
だが実際にはまだ20秒も経っていない。
どんな攻撃を仕掛けても避けられる,どんな動きをしても確実に撃墜させられる。
そんな想いがネコサーマの四肢の筋肉を硬直させていた。
しかしここに留まっていたところで何も始まらないし,なにも事態は変転しない。
意を決してスロットルペダルを踏み込んだ。
一撃離脱攻撃用の機体であるゼータプラスに近接戦闘は不利だ。
相手に突っ込むと見せかけて脇をすり抜け,変形して長距離からの狙撃。
ネコサーマにとってはイチかバチかの戦法だが,
そんな作戦でも何もせずにやられるよりはよっぽどマシだ。
背部バーニアからジェット気流を噴出させ,ゼータプラスが猛進する。
ズゴックEを横目にすり抜けられると思った瞬間,激しい衝撃に襲われ全天周囲モニターが漆黒に包まれた。その直後,墜落したと判る衝撃の連続を感じ,何か建造物らしきものを破壊しながら機体が静止した。
「くっ!・・・何だ?やられた?」
辛うじて生きている自分を感じながらコックピットハッチを強制パージし,
外の状況を確認するため,恐る恐るクビを出し様子を伺った。
そこにはミッドナイトブルーに塗装されたMSの頭部を右の手に持った“灰色カエル”が立ちはだかっていた。
「だめか・・・」
万事休す。そう感じたネコサーマの視界の片隅に白い閃光が走り,
同時にズゴックEが右手に持っていたMSの残骸を投げ捨てて振り返り様に左腕を上空に向けた。
「何者だ!?」

第七話← →第九話