機動の戦士 第十二話 ~消耗~


「私も出ることになるとはな・・・」
ク・マオーは待機していた深紅の機体のコックピット内で独り言ち,
静かにその両の瞼を開けた。
「ナイチンゲールⅡ,出るぞ!」
大型潜水艦「マッドアングラー」から出撃したMSはまっすぐ曇天に向かって上昇した後,
弧を描いて陸地に向かって飛翔した。

ミライは朦朧とした意識のまま戦っていた。
対する敵はニュータイプ,もしくは強化人間であろうことは理解していたが,
もうそんなことはどうでもよかった。
敵の思惟が機体を通じて自分の中に入ってくる。
それはとてもシンプルであったが機械的で莫大な情報量を持ち,
その感覚はミライのシナプスを焼き尽くすような熱を帯びていた。
しかしTHE-Oの機体,そのシステム自身は,ミライの本能である生存欲求に直接働きかけていた。
『生くるなら戦え!』

高度な演算能力を遥かに上回る得体の知れないモノとの対峙に,ローズも焦燥していた。
「コイツっ!なんで・・・・なんでだよっ!?」
冷静さを失ってはいたが,それでも自らの能力をフルに稼動させ,目の前の脅威に立ち向かっていた。
「ファンネルさえ!ファンネルさえあればこんなヤツ!」
旧型の中古MSに搭乗している自分が呪わしかった。
「ハマーン様のキュベレイさえあれば!」
ローズ自身は気が付かなかったが,その両眼からは悔しさのあまり涙さえこぼれていた。

「ホントに飛んだな!トドマー中尉!」
「なんだよ!飛ぶと思ってたんじゃないのか!?」
二人の中尉は瓦礫に半分埋まっていた,歴史の闇に消えかけていた兵器で空に飛びだした。
「ネコサーマ中尉,武器の類は使えないぞ!エネルギーが足りない。」
「なんだって!?どうすんだよ!」
複座ではないコックピットに男二人が詰まっている姿はとても滑稽に見えた。
しかし現代の操縦システムに慣れた二人は旧世代の機体の操縦法など知る由もなく,
機器類をいじってるうちにエンジンに火が入り,二人の意思とは反して“出撃”してしまった。
「とりあえず・・・戦場に向かえ!」
トドマーは自分のヒザの上に乗っているネコサーマに言った。
「了解!トドマー中尉,スロットルペダルを踏み込め!」
ネコサーマは「二人羽織」という旧世紀の演芸をネット配信の画像で観たことを思い出し,
独り噴き出して笑った。
「どうした?なにが可笑しい?」
尋ねるトドマーにネコサーマは応えた。
「なんでもねぇよ!生きて還れたら二人でやりたいことを思いついただけだ!」
あと7日あまりで今年が終わることをネコサーマは思い出し,
ドック基地で催されるニューイヤーを祝う酒宴に,尻の下にいる男と行きたいと思った。
~つづく~
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この物語はフィクションです。
登場する人物,団体は元ネタが容易に想像つくかも知れませんが関係ありません。
当ブログに名前を連ねた方はご注意ください。
ですが関係ありません。
模型提供:まどとし氏
ベリーサンキュウ!

投稿者:

みらい

西森未来と申します。 カメラとベースの修行中です。 自転車が大好きです♪

“機動の戦士 第十二話 ~消耗~” への7件のフィードバック

  1. 続編お疲れ様です!
    そうですね!ファンネルがあればすぐに勝負がつくのは明白!しかしファンネルがない!そこが物語のいいところなんだと思います。トランス状態のミタイ大尉と悔し泣きローズ少尉、続きが気になります~

  2. うむ、二人羽織りな。
    あれはカップラーメンでやると面白いのだよ。
    知っていたかねミライ大尉(笑)
    シナプス焼ききれ間際のミライ大尉、
    ローズ少尉の泣きべそ、
    トドマー中尉のお膝に乗っかってるネコサーマ中尉、
    て。
    てんこ盛りでワロタ(´∇`)

  3. >ローズ少尉
    やはりニュータイプ若しくは強化人間の場合,
    なにかしらのハンディが必要でしょう。
    カミーユの精神を持っていったTHE-Oですからね,
    ミライは無事に還れるでしょうか?
    >ユリコ艦長
    なるほど,カップラーメンですね♪
    ラジャ!
    冒頭にはク・マオー大佐も出演されてますしね,
    これでモンベツのクルーが出たらオールスターでしたが,
    力尽きました・・・

  4. そっか、Gファイターは一人乗りでしたねw
    「二人羽織」はまさかあのメカの登場フラグ???

  5. >トドマー中尉
    もしかして「あのメカ」って
    最初は二人乗りだったけど,後半戦に一人乗りになったアレですか???
    劇場版では出番が途中でなくなったヤツ。

  6. それですw
    ストーリー進行上、戦艦もほしいですね。
    でも高いんですよねぇ・・・

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