機動の戦士 第十話 ~協力~


『寒い・・・。なんでこんなに寒いんだ。俺は南国育ちなんだ,雪なんか見たくもねぇ!』
目を開けると視界はすべてグレー一色だった。
見上げる空から降りしきる雪が放射状に広がっていくように見え,
一瞬トドマーは宙に浮かび上がっていくような錯覚に囚われた。
「お,気が付いたかい?中尉さん」
「俺は・・・。生きてるのか・・・。」
トドマーは体中に痛みを感じながらも,手足が動くこと,
そして胸や腹,頭を手で触ってそこにソレがあることを確認した。
錯覚とは言え,死んでしまったらあんな風に空に還るのかとの思いに
トドマーの心と身体が少しだけ震えた。
「ドック守備隊のネコサーマ中尉だ。電源の落ちた脱出ポッドをこじ開けるのは難儀だったゼ。」
GMのものらしい脱出ポッドの横に,そんなに背は高くはないが屈強そうな,
いかにも軍人然とした男が立っていた。
「助けてくれたのか・・・。千歳第七師団のシー・トドマーだ。礼を言う。」
ネコサーマは肩を竦めながら大破したZプラスを見上げて言った。
「気にすんな,俺もヤラれたクチだ。」
そう言いながらネコサーマは,自らのMSが墜落して倒壊寸前となった建物に入って行った。
「トドマー中尉!手伝ってくれないか!」
瓦礫の向こう側から声がする。
瓦礫の山と化した建物の正面玄関(もはや入り口のカタチは留めていないが)には
“トマコー・マイシティ科学センター”と書かれていた。
ここは旧世紀から続く由緒ある博物館で,
科学の発展と進歩の歴史的遺産が収められている場所だ。
古くはアポロの時代のロケットや第一世代のモビルスーツなど,
大半は模型だが一部本物の機体が展示されており,
子供達への科学への興味を育てるためのアトラクションも設置されている。
トドマーは黙って砕けたコンクリートの上を,声のする方へ進んで行った。
倒れた柱に押し潰されているクローバー社製のMSを見つけ,
こんなものまで展示されているのかと,感心と驚愕が入り混じった感情が湧き,
その顔に少し笑みが戻った。
奥のブースからネコサーマの声がした。
「コイツを動かせねぇか?手伝ってくれ。」
およそ兵器とは思えないカラーリングが施された重爆撃機のような機体がそこにあった。
「これは?」
その特異な形状をした機体を見上げながらトドマーは言った。
「コアブースターに開発競争で負けた機体らしいぜ。」
傍らにあった解説パネルによると,
1年戦争当時,MSの支援と戦場までの運搬を目的として開発された機体であることが判った。
しかし,ハイコストなことと,生産工程の複雑さ故,
よりシンプルでコストパフォーマンスの高いコアブースターが正式採用されたらしい。
「こんな派手なヒコーキだか戦車だか判らんモノを動かすのか?狙い撃ちされるぞ!」
半ば呆れてトドマーは言った。
「アンタのお仲間がヤバいんだよ。あのズゴックのパイロットは普通じゃない。」
トドマーが気を失っている間の戦闘をネコサーマは簡単に説明した。
「あのTHE-Oのパイロットもニュータイプなのか?アレの動きも凄まじかった。」
ミライ大尉が?どういうことだ?
思惟をめぐらせながらもトドマーは何もしないよりははるかにマシだと思えること,
目の前の機体を動かすことに力を貸そうと思った。
~つづく~
第九話← →第十一話
この物語はフィクションです。
登場する人物,団体は元ネタが容易に想像つくかも知れませんが関係ありません。
当ブログに名前を連ねた方はご注意ください。
ですが関係ありません。

投稿者:

みらい

西森未来と申します。 カメラとベースの修行中です。 自転車が大好きです♪

“機動の戦士 第十話 ~協力~” への7件のフィードバック

  1. お、久しぶりの続編ですね。
    まさかGファイターまで出てくるとはw
    最近、新しいのを作ってないから、昔作ったやつをUPしていかないといけませんな。

  2. 苫小牧の科学館にはミールが展示されあります。現役を退いた、救助ヘリコプターも展示されてありますから、整備すれば飛べるかもしれませんね。そこにGファイターのストーリーが重なって、面白かったです。今後の展開を楽しみしています!

  3. >気にすんな,俺もヤラれたクチだ
    このセリフがとってもスキ♪
    気にすんな。あたしもヤラれたクチだ(意味不

  4. おっ、今回は連邦軍のモビルアーマーが主役で新展開ですか。 飽きさせませんなぁ(笑)!

  5. >トドマー中尉
    やっと続編です。
    貴官には「クローバー製MS」に反応して欲しかったです(笑)
    http://www.youtube.com/watch?v=9J8D2GbNqSg
    ガンプラできたら見せてくださいね,
    本作で登場しなかったら次回作で!
    >ローズ少尉
    科学館でミールを見たときに,
    今回のお話を思いついたんです。
    ミールの意味,ご存知ですか?
    最終回での重要なキーワードです♪
    >ユリコ艦長
    あら,艦長もヤラれてましたか。
    そろそろ「ヤラれ」に向かって加速しますよ。
    >ぴぃさん
    喜んでいただいて光栄です♪
    自分を主役に据えて,自己満足してるのが
    他人様を面白がらせてるのならシアワセってもんです。

  6. クローバー、ツッコむの忘れてた!
    この設定完全無視の姿勢がしびれますね。

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