ゼータプラスと対峙していたローズは,振り向きざまに巨大なクローの中央からメガ粒子のビームを発射させた。
一条の光が2体の巨大なヘルメットを被ったように見える人型の頭を貫く。
「・・・邪魔をするな・・・」
「なんだ?仲間割れか?」
トドマーはチャンスと見てズゴックEの背後に着地し,ビームサーベルを発振させた。
瞬間,モノアイがぐるりと後頭部に周り込み,トドマーの心までを射抜くように睨み付けた。
「こ・・これは機械の目じゃない!」
鋭い眼光に貫かれた・・・
そう思った刹那,GMを見据えたモノアイをブレさせもせず回転した巨体は,遠心力をもその左腕に乗せ,腹部に巨大な爪を食い込ませた。
「どういうんだ?どういうヤツなんだ!?」
なにかおかしい。旧式の機体にこれだけの動きをさせるパイロット。
蛇に睨まれた蛙のように,動きを封じられたようにさえ感じる。
つい先刻までネコサーマの中で “灰色カエル”だったMSに。
2機のギラドーガが倒れ込み,GMの爆炎が立ち昇る中に不気味なシルエットを浮かべたズゴックEは,再びゼータプラスに向き直りその爪の中に握った朱色の球体を投げ捨てた。
「モカウよぉ!俺たちの脱出ポッドもアレにしようぜ・・・」
「そうだな・・・これじゃ命がいくつあっても足りやしねぇ!」
向かい合う2体の機体の足元をマンタとモカウが走り抜ける。
悪運というのはこういうものを言うのであろう,またはコレが彼らの才能というべきものであろうか。
戦場で生き残る術を身体が覚えており,そしてその記憶をDNAの螺旋の中に刻み込んでいるのかもしれない。きっと彼らはこの先も一つしかない命で生き延びていくことが出来るだろう。
つづく
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この物語はフィクションです。
登場する人物,団体は元ネタが容易に想像つくかも知れませんが関係ありません。
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ですが関係ありません。
カテゴリー: 機動の戦士
機動の戦士 第六話 ~焦燥~
「ミライ大尉はまだ着かんのか!?」
じれた声でユリコ艦長は怒鳴った。
「ミライ機は後1分です!トドマー機,敵機と接触!ドック守備隊のゼータプラスは既に会戦しています!」
オペレーターの丁・太楼が負けじと叫び返す。
「ドック付近にさらに2機!ギラ・ドーガタイプです!」
なんだと?
我が隊から,これ以上の戦力は割けんぞ・・・
ユリコは親指の爪を噛みつつ思案した。
今回の敵の目的はなんなんだ?
リムパ中将の暗殺の陽動にしては,襲撃の場所が稚拙すぎる。
罠だとしても皆目,目的の見当がつかん・・・
「丁少尉,ミライ大尉に伝えろ!敵の動きがおかしい。」
ユリコは現場に向かえないもどかしさに苛立ちながら,
レーダーのモニターを睨み返した。
「ミライ大尉,聞こえているか? さらに敵機増!ギラドーガが2機だ!」
「了解!丁少尉。ドックの守備隊にもあと30秒で着くと伝えてくれ!」
つづく
第五話← →第七話
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機動の戦士 第五話 ~援護~
「なんか港の方が騒がしいようだな,モカウ!」
「なんでも古いジオンのMSが連邦とやり合ってるってよ,マンタ。」
古いジオンのMS?
そんなのがこんなとこでなにやってんだ?
マンタは考えたが結局は同じことだと思った。
俺たちはジャンク屋だ。
騒ぎが起きれば稼ぎのチャンスだ。
彼らの乗っているモビルスーツは
容姿こそネオジオンのギラ・ドーガだが,
内部のシステムはそれこそ30年前のものも使っている。
1年戦争の時代から戦災孤児となった身で
生きていく術はそういくらもない。
彼らは孤児の中でも運の強い部類にはいるのだろう。
ありあわせのパーツを組み上げ,一応の形を作り上げる技術も身につけた。
MSの操縦も見よう見まねとチャレンジ&エラーで覚えたものだ。
今回の戦闘だって,どっちに正義があろうと関係ない。
自分たちの有利な方について,
明日のメシに繋げるだけだ。
「マンタぁ!オレはジオン側に就くぜ。」
「同感だ。あのズゴックの動き,タダ者じゃねぇ・・・」
2体の蒼と碧の機体は,
ローズのズゴックEの背後から近づき,外部スピーカーから語りかけた。
「助太刀するぜ!ズゴックさんよぉ!」
第四話← →第六話
模型提供:まどとし氏
べりーサンキュウです。
機動の戦士 第四話 ~迎撃~
第一種戦闘配備の警報が鳴り響く中,ネコサーマ・ノダーンはヘルメットのバイザーを半分開けたままキャットウォークを駆け抜け,ミッドナイトブルーに塗装された量産型Zガンダム“ゼータプラス”のコックピットに飛び込んだ。
「一体どこから現れやがった?」
第一次ネオジオン抗争以後,地球圏での戦闘は起きてはいない。
シャアの反乱も失敗に終わった今,地球上において連邦に楯突こうなどという輩はいないものと考えられていた。
そのため,1年戦争当時のジオン公国軍で正式採用されていた水陸両用機の構想は既に絶えて久しい。
現在の連邦地上軍にとって,海からの敵の侵入などまさに寝耳に水と言っていいだろう。
「ネコサーマ中尉!敵MSの素性が判った。ヤツは1年戦争の生き残りだ。」
管制室からの指示がスピーカーから流れる。
サブモニターに敵MSのデータが転送されてきた。
ズゴック・エクスペリメント。
ジオン公国軍がジャブローに侵攻した際に採用されていた水陸両用MSの発展型である。
しかしいくら発展型とは言え,クラシックカー並のスペックであることには変わりない。
「1年戦争だって?そんなロートルがまだ現役なのかよ・・・」
ネコサーマは連邦上層部が“ガンダム神話”を鵜呑みにして開発した量産機のスロットルペダルを踏み込み,人型ではないMSで滑走路を疾走した。
飛行形態で出撃した群青の機体は,ものの1分もかからずにズゴックEを目視で確認できる位置まで到着した。
冬の海を連想させる塗装が施された敵機は,既に埠頭に上陸していた。
「灰色カエルが陸の上で何ができる!」
ネコサーマは戦闘機のシルエットをした乗機を人型に変形させ,ズゴックの進路上に着地した。
その刹那,ズゴックはその鈍重さを具現化したかのような機体を跳躍させた。
魂をも大地に張り付かせようとする重力というものをまるで感じさせないように。
「・・・っ!速い!」
肌にザワザワした寒気を感じながらネコサーマは,
対峙している相手が只者ではないことを直感した。
つづく ~時々は更新します。忘れてはいません~
第三話← →第五話
機動の戦士 第三話 ~強襲~
「なんて鈍重な機体だ・・・」
地上部隊に着任して初めての機体が水陸両用型モビルスーツでは
重力と水圧の両方の負荷がかかり,
いくら強化された肉体であろうともそれが正直な感想であった。
「そう言うな。それでもその機体はエクスペリメントだ。ただのズゴックではないのだぞ!」
「わかっている,任務は果たしてみせる,ク・マオー大佐。」
スピーカーから流れる上官の声に若干の苛立ちを感じながらもローズ・セブンスコード少尉は返答した。
この任務に成功したらまた宇宙(そら)に還れる・・・
あそこにはハマーン様が待っておられる。
そしてハマーン様は私に自らの乗機であった純白のMSを与えてくださる・・・
ローズはこの世で最も美しいと信じて疑わないMSに自分が搭乗している姿を夢想した。
「調整は巧くいっているようだな・・・ムラサメ研究所も良くやってくれる。」
ク・マオーはその口元に薄い笑みを浮かべた。
ハマーン戦争後,プル・シリーズに代表される強化人間プロジェクトを
研究・開発していたネオジオン軍内のニュータイプ研究組織は,
ザビ家の血脈を受け継ぐグレミー・トトの反乱,そしてその失敗後に解体されており,
その研究は日本にあるNT研究機関「ムラサメ研究所」が後を継ぐ形になっていた。
強化人間はその高いニュータイプ能力と強靭な肉体との引き換えに,精神面での脆弱性が問題となっていたが,
ローズ・セブンスコードは「カリスマ的人格に陶酔させる」ことによってメンタルの安定を保つ実験のシリーズの一人であった。
「カリスマ的人格」がこの世に存在するか否かは,もはやまったく意味を持たない。
ローズは自身の拠り所を得るため,巨体を前進させた。
つづく ~結構人気あるようなので~
第二話← →第四話
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機動の戦士 第二話 ~襲撃~
「ミライ大尉!所属不明機がトマコー・マイ地区から近づいている!」
ともに警備任務に就いていたシー・トドマー中尉のGMが第一戦闘態勢で飛び出していく。
「なんだって?いったい何処から!」
不意を衝かれたミライは一瞬反応を遅らせて機体を南西に向けた。
海に面したトマコー・マイ地区は連邦海軍の北方の拠点となっており,
港は大規模なドックになっている。
そんな方向からの正体不明機の接近を怪訝に思いながらもミライは背部バーニアのスロットルを開けた。
THE-Oの推進力なら10分足らずで到着できる距離,
そんな自分のテリトリーとも言えるフィールドに,
得体の知れないものの進入を許してしまったミライは
心の奥底にザラリとした感情を抱きながら機体をジャンプさせた。
「ミライ・・・至急現場に・・・・場合によっては・・・・・・かま・・ん!」
ミノフスキー粒子に通信を妨害されているがユリコ艦長の怒声は確実にミライに届いた。
「ミライ・ウェスト,THE-O!行きます!」
つづく ~たぶん~
ガンプラ提供:まどとし氏。とってもサンキュー!
第一話← →第三話
この物語はフィクションです。
実在する人物,団体,元ネタも容易に想像つくと思いますが,関係ありません。
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しかし関係ありません。
機動の戦士 第一話
表示パネルの外気温は-40℃を示している。
「流石に冷えるな・・・」
夜半から降りしきる雪の中に起立させた白亜の巨体のコックピット内でミライは一人言ちた。
白亜の機体,THE-O。
元々は宇宙用に開発された機体だが,たった1機だけ千歳第七師団に配備された実験機だ。
第一次ネオジオン抗争,後にハマーン戦争と呼ばれるようになった戦時中,
ヘリウム3採集目的の木星巡航艦の中で開発されたモビルスーツだ。
ミライの乗機は戦争終結後,連邦軍がその技術データを元に製造したレプリカ機で,
その機動性を重力下,しかも寒冷地で使用する目的で再開発された曰くつきの代物だ。
「まったくダルい仕事だぜ・・・」
前線の視察および士気向上とやらのため,
ダカールからやってくるおエラ方の警護の任に着いてもう2日,
ただ雪原に立っているだけの任務に退屈しきったミライは欠伸交じりにつぶやいた。
「聞こえているぞ!ミライ大尉。」
突然スピーカーからユリコ艦長の鋭い声が響いた。
THE-Oの後方約10kmの位置に鎮座しているビッグトレー級陸戦艦「モンベツ」の女傑の声が容赦なくミライの鼓膜を直撃した。
「だって艦長,リムパ中将の到着はあと1時間後でしょ?なんだって2日も前から見張りなんてしてるんです?」
「黙って役目を果たせ!それとも歓迎演奏のラッパ隊にでも・・して・・・か?・・」
突如無線が途絶え,ミノフスキー粒子濃度を示すメーターの指示がレッドゾーンを指した。
「なんだ!?敵か!?」
つづく ~かもしれない~
→第二話
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