熊が 目の前を

 雄国カルデラの外輪山を一周しようと、
山に入りました。

   < 予定 >
 A 八方台登山口
 B  猫魔ヶ岳
 C 猫石
 D 雄国沼休憩舎
 E 雄国沼展望テラス(金澤峠)
 F 保健保安林入り口
 G 厩岳山
 C 猫石
 B  猫魔ヶ岳
 A 八方台登山口

 八方台登山口Aから猫魔ヶ岳Bまでの
登山道では、リーン リーン と登山者の
携帯する鈴の音が響いていました。
 猫魔ヶ岳Bから雄国沼休憩舎Dまでの
登山道では、チャリーン チャリーンと
鈴の音が一段と響き渡っていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
 雄国沼休憩舎Dで昼食を摂った後、
外輪山周回コースの西側を進みます。
 雄国沼展望テラス(金澤峠) E から、
保健保安林入り口 F、厩岳山 G を経て、
猫石 C に至る道は、『山と高原地図』には
載っていても、多くの観光案内には
載っていません。

 AからDまでは、鈴の音や登山者の話し声が、
絶えませんでした。
 DからE、Fを通る道は、まるで別世界のように、
静まり反っています。

 AからDまでは,長雨の後で
滑りやすくなった細い登山道です。
 DからE、Fを通る道は、車が通れる
広くなだらかな道です。
 登山者がたくさん通る方が細い「登山道」で、
登山者が誰一人として通らない方が広い
「林道」とは・・・と、思っていた矢先でした。

 10mほど先で、誰かが路面に向かって捜し物を
しているようです。
 コンタクトレンズでも落としたのだろうか。
 頭は、地面すれすれ。
 それにしても、高そうな毛皮。
 毛もフサフサしている。
 上着だけじゃないぞ。
 ズボンまで毛皮だ。
 じゃあ、靴は・・・
 靴は履いてない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
 登山者じゃない。
 人間じゃない。
 くっ、
 くっまっ、
 熊だ、
 黒熊だー。

 それまで音も立てずにスタスタ歩いて来た足が、
凍り付きます。
 黒熊さんに離れてもらうには・・・
 何か音を立てなくては。
 無い知恵を振り絞って産み出たのは、
「ヤッホー」。
 鈴も笛も音を出す物を持って来ていないので、
声を出すしか方法はありません。
 吉と出るか。
 凶と出るか。
 できる限りの大声を出しました。
 幸い、黒熊さんは、うるさいなーと感じたか
どうかは分かりませんが、茂みの中に身を
隠してくれました。

 さて、この先どうすべきか。
 残り三分の一となった道を、
G→Cと進むべきか。
 三分の二まで周回した道を、F→E→D→Cと
戻るべきか。
 ずいぶん長く考えたかに感じましたが、実際は
即座に決断しました。
 戻ろう。
 戻るしかないと。

 戻るにしても、黒熊さんがいつ現れるか
分かりません。
 「ヤッホー」と言い続けるしかありません。
 声が途切れると、聞こえてくるのは風も吹いて
いないのに、クマザサの一部だけがゴソゴソと
動く音のみ。
 登山口に戻るまでの3時間20分間、何百回も
「ヤッホー」を繰り返しました。

 熊さんにとって、山は一生暮らし続ける場。
 登山者にとって、山は一時足を踏み入れる
だけの場。
 熊さんに絶対的な優先権がある以上、
多くの登山者のように「山を通らして下さい」と
熊さんへ事前連絡する必要があると
思い知らされました。

  starblue 前回の問題 解答 starblue
 野岩鉄道の、「野」は「下野」から、
「岩」は「岩代」から、名付けられました。

     starpink 今日の問題 starpink
 熊との遭遇を防ぐ方法は何でしょう。

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