動物も、植物も、この世に生を得たも
のは全て、死後に土へ帰ります。
海中生活から陸上生活へ変えた動植物
は、何億年もの歳月をかけて、岩と砂ば
かりだった大地を、養分を含んだ土壌に
していきました。
動植物は、土壌から生を得ては、土壌
に死する繰り返しを、営々と続けます。
累々たる屍体を得て、大地はますます
ふくよかになり、新たに多くの動植物を
育んでいきます。
その中でもとりわけ桜は、開花が見事
で、花が美しいため、人々の心を奪わず
におきませんでした。
梅やコブシなど、葉が芽吹かぬ枝々か
ら花を咲かせる春の花木は数え切れませ
んが、農作業を本格的に再開する時期に
咲き出す桜は、農の営みを先導し、他の
花木には代えられない存在感があります。
この存在感ゆえ、人々は死者を葬る地
の付近に、桜を次々と植えていきます。
「人の屍体」を得た桜は、美しさに一
段と磨きがかかります。 <つづく>
前回の問題 解答
小腸の長さは、生体で2~3m、死後で
6~7mです。
今日の問題
次の一文で終わる作品の名前は、何で
しょう。
今こそ俺は、あの桜の樹の下で酒宴を
ひらいている村人たちと同じ権利で、花
見の酒が呑めそうな気がする。
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