『落第』 夏目漱石

 夏目漱石は、15~6歳のころ、作家に
あこがれていたようですが、兄に猛反対
され、別の仕事を探しまわります。
 そこで出た結論は建築家。 
 収入を得ながら、趣味としても両立す
るという理由からです。
 その夢も、友人の忠告により一蹴され
ます。 
 将来の夢が二転三転して定まらなけれ
ば、学業に身が入らなくなるのは必然で
す。

 大学予備門に入ったものの、「少しも
勉強せず」にいた上、腹膜炎を患ったた
め、学期試験を受けられず、落第するは
めになります。

    ~  ~  ~  ~  ~

 元来僕は訥弁で自分の思って居ること
が云へない性だから、英語などを訳して
も分かっていながらそれを云ふことが出
来ない。
 けれども考へて見ると分かって居ること
が云へないと云ふ訳はないのだから、何
でも思い切って云ふに限ると決心して、
其後は拙くても構はずどしどし云ふ様に
すると、今迄は教場などで云へなかった
こともずんずん云ふことが出来る。
 こんな風に落第を機としていろんな改革
をして勉強したのであるが、僕の一身に
とって此の落第は非常に薬となった様に
思はれる。
    『落第』 夏目漱石 著 岩波書店 

    ~  ~  ~  ~  ~

 追試験を受けるなど、いろいろ方策は
考えられたのでしょうが、不十分な学業
を見つめ直し、自ら落第を決します。
 それをきっかけとして、一心不乱に勉学
に励んだということです。

 夏目漱石 1916年12月9日 永眠
        享年 四十九

 詳しくは、『学園だより 創立三十周年
夏目漱石と新渡戸稲造の学生時代』を、
お読み下さい。 

natsume-souseki

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
 

 

 
 
 

 

 

 
 
 

 

 

      前回の問題 解答
 兵庫県三田市に伝わる、じゅんさい
を用いた雑煮は、「藻を刈る」から「儲か
る」へ、そして「もうかる雑煮」と呼ばれ
ています。
 

 

 

        今日の問題 
 次の文で終わる作品は、何でしょう。
 ただ口のうちで、迷羊(ストレイ シープ)
迷羊(ストレイ シープ)と繰り返した。 

 

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