五･一五事件とチャップリン

　1932年の5月15日は、日曜日。
　蒸し暑い陽気でした。

　14日に来日したチャップリは、この日
首相官邸を訪れて、犬養毅首相と歓談す
る予定でした。
　ところが、予定は変更され、チャップ
リンは大相撲五月場所を観戦するため、
国技館へ向かいます。

　チャップリンに替わって首相官邸へ
乱入したのは、三上中尉以下九名の兵
士でした。
　兵士第一組は、犬養毅首相を銃殺す
ると、次は警視庁を襲撃します。

　兵士第二組は、内大臣官邸を襲撃。
　兵士第三組は、政友会本部を襲撃。
　民間第一組は、変電所を襲撃。
　民間第二組は、三菱銀行を襲撃。
　民間第三組は、西田税を襲撃。

　世界恐慌は、日本の農村に深刻な
影響を与えていました。
　そこへ冷害が起き、大凶作となり
ます。
　（グラフを参照して下さい。)
　農村の子供達は、欠食が続きます。
　娘達は、売られていきます。

　このような状況にいてもたっても
いられずに決起したのが五･一五事
件であると、兵士達は証言します。

　政界は、腐敗していたかもしれま
せん。
　財界も、腐敗していたかもしれま
せん。

　しかし、兵士･軍隊の存在を自戒
せずに、他者のみを否定すれば、大
変な事態を招くことになります。
　戦争を拡大すればするほど、兵士
･軍隊の存在意義を高められるから
です。

　五･一五事件や他の事件を経て、
兵士･軍隊は、民衆を救済するどこ
ろか、日本ばかりか世界各国の民衆
を、死に追いやっていきます。
　その数は、数百万名に上ると、言
われています。

　一人を殺せば殺人者だが、百万人
を殺せば英雄だ。
　殺人は、数によって神聖化される。
　　　　　　　　　チャップリン